生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

家財処分の立会い その3

受給者が施設入所などをする際にも、家財処分の制度は利用できます。

 

大変だったのは、有料老人ホームへ入所する際の事前立会いでした。その方は認知症が進んでしまっている高齢者で、日中の徘徊なども多発してしまっていました。デイサービスやヘルパーさんも入ってもらっているのですが、その隙間時間を徘徊されてしまい、何度か警察からの通報を受けていました。近隣に親族もおらず、夜間帯の見守りがどうしても手薄になってしまうこと、本人に認知症状の認識が薄いため、施設入所を決めるまでの意思決定が遅れたことなども苦戦の要因でした。薬を飲む習慣がなく、訪問看護師に指示をもらっても次の薬が飲めない、服薬の面でも難ありでした。

 

極めつけは病院にも行けなくなってしまったのがきっかけです。通院したら、帰り道が分からなくなってしまったとのこと。この事件がかなり本人にも重かったようです。何とか自分の認知症状を認識してもらい、このままでは自宅で生活することは難しいと思ってくれたため早急に施設入所の手続きを行いました。

 

そこでまた、家財処分の立会いを行います。今回も複数名で立ち会うのですが、この方の家は非常に綺麗に整理がされており、認知症状の方では少し意外でした。元々家に殆ど荷物がない方でしたが、それをずっと維持されていたのようです。しかし、認知症状が出てから鍵を落とす、家に入れず徘徊するを繰り返していました。当方も、道端でたまたま出くわしたとき、徘徊中だったのですぐにケアマネージャーさんに連絡をしたことがありました。

 

さて、本人に代わって色々と施設に持っていく荷物を詰め込んでいくのですが、都度本人に「これはどうします?」「これはいりますか?」と聞きます。この方、全て「いらない」と答えてしまうため、勝手に必要な下着、冬場のコートなどを詰め込む。どうしようか迷ったのが、ご遺族(多分お父様)の遺影等でしたが、これもいらないと。ふーむ、どうしたもんかと思ったのですが、これは仕方なく処分しました。

 

荷物を詰める時も、何がいるかいらないかを選別します。ぼろぼろの下着はいらないか、新品の〇ンゼの肌着が10枚も出てきたなんてこと、沢山あります。そのほか、歯ブラシ、コップ、お薬、年金手帳、通帳、色々と捨ててはいけないもの、すぐ必要な物を詰めます。市役所の仕事も結構大変です。

 

1時間ほど作業して、あとは明日の施設入所を待つだけ。不動産会社さんには事前に連絡をして、解約手続きを行っておりました。この方も少し離れたところに弟さんがいらっしゃって、念のため退去すること、遠方の施設に行くことを伝えていました。

 

問題は、明日の約束時間に家にいるのか。あと1日あります、また徘徊して、万が一転倒→入院なども起こりかねません。この1日の待ち時間がいつも嫌でした。

 

翌日、集合時間より早めに行くと、やはり本人いない・・・さて困った。しかし、今回はラッキーなことに最寄りのコンビニにいました。すぐ呼び掛けて、「今日施設行きますよ!」と伝えると、「ハイハイ大丈夫、ところでどちらさんでしたっけ?」と、いつもの調子でしたが、施設に行くことは忘れてなかったようです。ちょうど数分前に出かけたようでしたが、あと10分遅れていたらと思うと少し怖かったです。

 

あとは介護タクシーのお迎えが来て、同乗して遠く離れた地方の施設へ同行。もう市に戻ってくることはありませんが、入所という一つの区切りを迎えられました。

 

全て作業が終わった後日、不動産会社さんに鍵を返しに行くと、そのオーナーが「あの人、何度も徘徊して町の人とか、ケアマネさんが捕まえて家に連れて行ったんだよ。鍵もずっと無くしちゃって、何度開けてあげたか。結局家の中に鍵を忘れて、それで閉めちゃうんだよね。事故とか事件が起きなかったけど、あのままだったら退去はお願いしていました。」と感想。大きな事故になる前に動けたことがよかったです。

 

この方は入所までの道のりは長かったものの、準備自体はそれほど大変ではありませんでした(ただ、当日部屋にいなかったときに「しまった!!!!!」と焦り、冷や汗が出ましたが。)