生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

自動車の保有と生活保護

よく、生活保護の申請の際に抵抗がある要件として、自家用車の保有を認められないという話があります。

 

自家用車は活用できる資産であり、これらを手放し(多くは事前に売却)たうえで現金化、これを使ってからの申請が基本となります。

昨今は新型コロナウィルスの影響もあり、要件緩和を行なっています。なので、それほどシビアに車を保有していることで保護を受けられないと考える必要はありません。

 

しかし、我々福祉事務所として懸念することは別にあります。保有資産があっても売らないことはよくあるので、早く売るよう指導指示するだけ、あとは保護帯廃止を考えるだけなので、それほど困ることはありません。

 

勿論この指導指示も、何度も行うので、いきなり指示義務違反による停廃止とはなりません。だから、生活保護を一度受けるとなかなか抜けられない原因にもなります。

 

自動車保有で困ることは、生活の逼迫です。普通の生活をしていても自動車の維持管理にはかなりの費用がかかります。

日々のメンテナンス、駐車場代、車検代、各種保険料の支払い。地方で車が生活の中で必須な地域もあることは分かります。なので、保有することにそれほど大変な根拠は必要はありません。

 

ただ、この維持管理費をきちんと捻出できるのか、が大変難しいのです。とくに車検代や保険料ですね。

 

車検を切れている車に乗っている、これはそもそも罰則対象になります。車検を受けるだけでお金がかかるので、当然生活費から捻出します。

そして任意保険自賠責への加入。よく、自賠責のみ加入している方がいますが、任意保険加入が自家用車保有の要件となるため、これも必ず加入が必要です。

 

特に自動車事故で破損したり、最悪の場合被害者が出たり怪我や死亡者を出してしまった場合、生活保護費での支給は当然ながらありません。自分の怪我は最悪、医療扶助で支給される(これもどうかと思いますが)か、起訴等されて保護廃止となるかは分かりません。ただ、少なくとも何か莫大な医療費を自分に払うということはありません。

 

怪我や死亡してしまった方は、相手が生保受給者であるため金銭的補償を受けることができないとなれば、やはり任意保険に入らない方はそもそも自動車の保有を認めるわけにはいきません。

 

また、受給者の多くは基礎疾患を抱えている方がいます。心臓の薬や精神薬を飲んでいるなど運転に危険をきたす服薬状況であれば運転を認めるわけにはいきません。

 

過去に精神疾患の方が医師から服薬状況を理由に自動車運転を認められない方がいました。しかし、それでも自動車を乗り続けていたため、指示が無違反で保護廃止にしたことがあります。

少ない例ですが、例え容認できる要件が揃っていたとしても、福祉事務所が保有を容認する状況になければ、そこは自動車を売却するよう指導指示をする必要があります。

 

少なくとも急迫状況にある保護開始時などにおいて、自動車保有を認めてほしいという主張をするのはかなり難しいことがあります。維持するお金がない、要件が揃っていないなどがあればその時点では素直に自動車を廃棄して自分の生活費に回すべきでしょう。

 

これは事業用であっても同じことが言えます。任意保険に入っていないや、そもそも事業が立ち行かない状態で車を保有すべきか、いったんその事業から離れて生活を立て直すべきと考えます。

 

生活圏において必要という主張もありますが、これも頻度と維持管理費との比較になります。

 

福祉事務所から言えることは、任意保険に入って全て車の保有すべき要件をクリアする、あとはその車の処分価格が低いなど、諸条件をきちんと把握すべきです。

 

間違っても福祉事務所に隠して所有、運転し事件事故を起こすことのないことをお願いします

 

いずれにせよ、保有するためにはその地域で本当に必要なのか、