生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

4月の所払い

新規採用者や異動者を最初に待ち受けるのは、引き継ぎ訪問とともに最初の所払いでしょう。

自治体で異なりますが、おおよそ4月1週目に行われます。

この所払いで、福祉事務所で保護費を受け取る受給者の引き継ぎが行われたりもします。新旧の担当者+受給者が一堂に会するので、ごちゃごちゃになりがちです。

私的にこの日に引き継ぎをしなきゃいいのに、と思うのですが、この日にしか会えないという理由と、旧担当者もいつまでも担当していられないという理由もあります。

 

特に新しく異動してきた方は、こ、これがケースワークか!となることが大半です。何せこんなに人と一度に会うこともなく、また、みんなして何か要望やらを言ってくるので頭が混乱します。

 

この日は割り切って、挨拶程度、後はまた会いに行くということを伝えれば大丈夫です。何かここで具体的な支援やらは決まりません。まず、この日は間違えなく保護費を渡すこと、福祉事務所の所払いというものに慣れてください。

異動も決まった3月末

そろそろ基準改定の決定時期も差し迫り、援助方針、次年度の担当決めなど慌ただしいところかと思います。

また、新しく福祉事務所に配属に決まった職員さんもいる中で、不安を抱えている人たちも多くいると思います。

(私のところにも、数名「どうしたらいいですか?」「やっていけますか?」「辞めたいです( ;  ; )」などの相談をしてくる人もいます。)

 

まず、4月1日に配属先へ行ってみてください。そして、1週間、勤めてみてください。最初は誰でも初心者です。そして誰でも初めましてなことがあります。平気です、先輩達が言うことなんて大半は大袈裟なことです。

結構記憶なんて曖昧で、初めて福祉事務所に来た時なんてあんまり覚えていません。

私も覚えていません、最初の所払いの時に様々な受給者を見て「これが福祉事務所か!」となりましたが、最初の数週間、人の顔と作業を覚えることで精一杯です。

 

是非、休養をしっかり取ってください。

是非、新しいことを覚えてください。

是非、周りに「どうすればいいですか???」とひたすら、めげずに相談してください。そうすれば必ず1人にならず、なんとかなります。

 

頑張りましょう。私も少しずつまた更新させていただきます。

何をしてもコメントが返せない、、、

はてなブログで今まで返信できていたのに、なぜかできないので記事になってしまいました。

 

資産を保有しながら保護を受けていた場合

 

まず、資産の保有開始時期によります。保護開始時から保有をしていて、受給中に発覚した場合は開始時に遡って保護費の返還が生じます。
これは、保護廃止をした以降であってもです。

 

過去に他自治体へ移管廃止した受給者がいましたが、数ヶ月後、移管先の自治体から資産申告を改めて受けたところ、毎年数十万円の債権配当金を受けている口座を発見したと連絡があり、驚愕したことがありました。

 

当然改めて口座を洗ったところ、申告のない口座を持っていて、しかも開始以降に譲り受けた資産でした。ここだけでも驚きでしたが、その額にも驚きました、、、当然保護費返還になりますが、、、、、。

 

なお、受給中に資産を保有した場合は、この保有し活用できる状態になってから保護費の返還となります。
遡るか、遡らないかの違いがありますので注意が必要です。よく、遺産相続などでこの問題が生じますが、相続をして多額の遺産が入った時にどの期間の保護費の返還となり、それ以上の余剰資産で保護廃止となるか、計算間違えをしないようにしないといけません。

困難ケースとCW その4

これは困難ケースというより困難事例かも知れません。

 

よくあるのが高齢者世帯で認知症になってしまった受給者の対応です。生活保護を受けている割合では高齢者が6割、7割ぐらいと言われています。地域差はあれど、やはり担当する受給者が若い、稼動年齢層ばかりという方は珍しいと思います。

 

その受給者でも、特に健康的な人、すでに病気ばかりしている人、様々ですが、私的に大変だったのが認知症が進行してしまった単身と、複数世帯の対応でした。

 

まず、単身世帯なのですが、とにかく動き回ってはどこかでトラブルを起こしてしまう方でした。前にも書いた通り、通常の社会生活を送っていれば受給者とその人達との間の話なので、福祉事務所は特に関与しません。と言えども、バンバン福祉事務所に連絡をしてくる方は多いです。

 

別に保護者でも身元引受人でもないのに、福祉事務所、行政に責任を背負わせる、もっと言えば組織内でも、生保受給者の起こしたことはケースワーカーが解決すべきという誤ったマインドの職員がいます。この点もまたいずれ書いていきます。

 

この動き回ってしまう受給者で、私が体験したのは、福祉事務所としても対応が難しい幾つかの例です。

 

まず、認知症の進行が分かった段階で包括支援センターと連携をし、介護認定を改める作業をしますが、当然すぐに認定更新はされません。その間、今の介護度でギリギリまでサポートを入れますが、当然隙間はできます。

訪問ヘルパーさん、看護師さんに来てもらうも、この時確か要介護1ぐらいだったので両方週1回がギリギリだった記憶があります。

 

当然30分とかのケアだけなので残りの時間は1人です。この時にフラフラと外出して、家の鍵を落とす、お金を落とす、帰れなくなる、などなど沢山の電話が入りました。

 

1番困ったのは鍵を無くして、家に入らなくなった時でした。水曜日で不動産会社が休みで、何をやっても家に入らない。午後4時くらいにスーパーの店員さんから電話が入って、迷子キーホルダーを見てかけてきたそうです。

 

80歳後半の方を一晩どこかにいかせることもできない。

福祉事務所で一泊なんて当然できません。

 

さて困った、鍵屋さんなんてものは呼べないし、窓ガラスを割れば当然住居破壊なので割ることもできない(当の本人も理解ができない)。友人知人もいません。

 

じゃあドヤに連れて行くのか、これもかなり困難でした。もちろん候補に入れましたが、現地からドヤまで歩くこともできない。

 

無料低額宿泊所も今からでは難しい。病院へ連れて行くか。

 

しかもアパート二階でしたが、、、、、すると、「あそこの出窓、開いているかも」という受給者の信じていいのか分からない発言をいきなりしてきました。

 

え、あそこ登るの?登れたら入っていいですか?と理解をしてくれているだろうと言うことで、許諾を得て、福祉事務所から応援を1人来てもらい、登りました。

 

配管を伝って開けてみると、開きました。カラカラと。しかし、腰高窓なので手で登らないといけない高さ。

 

もう、意を決して登りました。ダイハードでした。何とか頭から床に落ち、手を打ちましたが、中から鍵を開けて一件落着。

 

今考えても良くやったなぁと思いました。若さですね。

 

この頃、2日置いてだったか、施設入所をして今もご存命だそうです。当然本人は、この時の話、何も覚えていません。

 

 

 

困難ケースとCW その3

ずいぶん前ですが、とにかく頻回受診をする受給者がいました。1日に何度も複数のクリニック、病院へ行き、同じ薬を何度も処方してもらうというものでした。当然お薬手帳なんてものは持たないので、各クリニックや薬局でどんな薬を処方されたかは分からず、ある時福祉事務所の医療担当から聞かされました。

 

よく見ると、毎回湿布、鎮痛剤、痰切り、熱冷ましを処方されていて、薬代だけで数十万円でした。勿論そこに個々の診察も入りますので、最初一桁間違ってるんじゃないか?と疑ったくらいです。

 

たまたま自分の代で気付いてしまったので、自宅訪問をするとあの大量に処方された薬の山がありました。薬は決められた量以上に飲むと健康被害が生じる可能性はあります。私から、服薬管理ができていないのではないか、複数の医療機関に同一症状で通うことはできない等をお伝えするのですが、やはり翌月は同じことを繰り返す。

 

クリニックも商売ですので、わざわざ福祉事務所から診察をしないでくれ、ということはできません。注意してくれ、程度になります。また、クリニックも診察に来てしまえば、受けざるを得ない、診察すれば当然福祉事務所に診療報酬を請求します。

 

服薬管理の訪問看護などの導入も検討しましたが、全く意味がなく(抑止にならず)、却って訪問看護の報酬が上乗せされるだけでした。

 

ある時は指示書を出すか、という話もしたのですが、結局支持義務違反をどう捉えるかの判断が難しいため、これも見送られました。複数の医療機関への通院がどの時点でダメなのか、それが本当に同一症状か、判断が難しいということでした。確かにずっと見張っているわけにもいかず、また同一症状かを判断するのがタイムリーにはできず、なかなか決定打に欠けるものでした。

 

1番対応が難しかったのが、当の本人が頻回受診の感覚がないことです。ちょっとその時の医師の診察が気に食わない、待たされた、薬局で生保のことを何かしら言われた、など、相手に対しての不満を他に通院することで解消しようとするだけでした。そして、むしゃくしゃになって薬を大量に飲む、という方でした。

 

結局、鎮痛剤のオーバードーズで搬送され、その後、他院に搬送されていきました。居宅退去の際に大家さんに立ち会いを求められましたが、大家さんも大量に転がっている薬をみて、生保はいくらでも薬をもらえるんだね、と言われてしまいました。

 

今思い返しても、どう対応すれば良かったか迷う方でした。

 

困難ケースとCW その2

ケースワークあるあるですが、本当に困難ケースと言われる受給者とは一体どんな方か。

 

私的には、以下の点がやはりケースワークを難しくさせているな、と思っています。

 

・福祉事務所の説明を聞かず、また相談なしに行動をする。

・自分の好きなように行動をする。

・他者に金銭的、精神的に迷惑をかける

 

この3つの要素が強くなればなるほど、困難ケース化してくるかなと。

 

生活保護と言うのは説明が必要ないほど有名な制度です。健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な金銭給付、現物給付を受けることができる制度です。ただ、この制度には幾つものルール、決まり事があります。

 

この決まりごとをきちんとこなす、ことを受給者には求められますし、ケースワーカーは、この決まりごとを守ってもらえるよう日々支援をしていきます。

 

決まりごとを守れない人がどうしても一定数います。保護費を月内に掛けて使うところ、1週間で使い切ってしまう、病院は勝手に何個もハシゴする、医療機関先で医師や看護師に暴言を吐く、服薬管理を全くせず、わざと処方された薬を飲まないでまた病院へ行き薬を処方される、ヘルパーさんやケアマネさんにセクハラする、他者からお金を借りまくる、、、

 

それなりにあるのですが、やはり度を超えてくると周りから「何とかしてください」という要請を受けたりします。この要請に対して福祉事務所ができることなどほとんどありません。

 

が、それでも何とかしろと言われればできうる限りの方法で対応しますが、やっぱりどうにもなりません。

 

このどうにもならなくなった時、誰かに損害を与えてしまえば流石に福祉事務所としても支援の限界を感じることがあります。

 

個別の事例はまたそのうち書きますが、全て自分ないし仲間のケースワーカーが過去に経験しているものですので、読んでいる方々は、決して自分たちだけではないんだ、と参考にしていただければ嬉しいです。

困難ケースとCW その1

困難ケース、いつしも誰しもが対応をどうしたらいいか悩んでしまう受給者は少なからずいます。あくまで一般論として、困難ケースと言われる受給者はどんな人たちかを考えていきます。

 

よく、引継ぎなどで「この世帯は困難ケースだから、対応ができないのでよろしく」という前任ケースワーカーがいます。突然引き継ぎを受けた際に、嫌だなぁどうしようかなぁと躊躇してしまい、ついつい訪問を後回しにしてしまったりします。

すると突然ある日、福祉事務所にいきなり来所してきて「今の担当を出せ!」と福祉事務所中に聞こえるくらい大きい声で怒鳴ってくる。

慌てふためいて担当が出ると、そこから1時間ひたすら怒鳴られる。

 

なんてことがあります。いや、そんなに沢山起きても困るんですが、なぜか毎年起こる。

 

私も過去、この経験はあります。やはり同じように前任からこのような引き継ぎをされ、気持ちが萎えてしまい、訪問したくないなぁと思っていたところ、何かの機会に所内から一斉に通知を出すことがあり、その時に初めて封書を送付したのがきっかけでした。その人は、全く会ったことのないケースワーカーから封書が届くなんてあり得ない、と怒って来所されました。

 

別に理由なんて何でもいいのです。相手にとって、顔を見たことのないケースワーカーから封書が届いたことが気に食わなかった、それだけです。確かに見方としては、「そんなことで怒るなんてあり得ない、ケースワークを萎縮させる、そんな暇があれば、、、、」などと思う方もいるでしょう。

 

しかし、この受給者は本当に困難ケースでしょうか?引き継ぎ訪問の時にきちんと挨拶していれば、4月の早い時期に訪問していれば、何かしらのきっかけを作って先に接触しておけば、怒鳴られることはなかったのです。

 

単に、困難ケースだから、という言葉の印象が先行してしまった、というのがミスでした。

 

勿論、これは一例です。本当にどうにもならない、生活保護制度を逆手に取っている受給者も、それがどんな理由であっても、対応が難しい方はいます。

 

ただ、安易に困難ケース、という言葉を使うのは控えた方が良いと考えています。また、前任ケースワーカーがミスしたことで、困難ケース化させてしまうこともあります。この場合も少し時間を使って訪問してみる、何か困っていることはないか、無ければあった時に連絡して欲しいという一言を残して置くことも、ケースワークには必要なことです。