生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

困難ケースとCW その3

ずいぶん前ですが、とにかく頻回受診をする受給者がいました。1日に何度も複数のクリニック、病院へ行き、同じ薬を何度も処方してもらうというものでした。当然お薬手帳なんてものは持たないので、各クリニックや薬局でどんな薬を処方されたかは分からず、ある時福祉事務所の医療担当から聞かされました。

 

よく見ると、毎回湿布、鎮痛剤、痰切り、熱冷ましを処方されていて、薬代だけで数十万円でした。勿論そこに個々の診察も入りますので、最初一桁間違ってるんじゃないか?と疑ったくらいです。

 

たまたま自分の代で気付いてしまったので、自宅訪問をするとあの大量に処方された薬の山がありました。薬は決められた量以上に飲むと健康被害が生じる可能性はあります。私から、服薬管理ができていないのではないか、複数の医療機関に同一症状で通うことはできない等をお伝えするのですが、やはり翌月は同じことを繰り返す。

 

クリニックも商売ですので、わざわざ福祉事務所から診察をしないでくれ、ということはできません。注意してくれ、程度になります。また、クリニックも診察に来てしまえば、受けざるを得ない、診察すれば当然福祉事務所に診療報酬を請求します。

 

服薬管理の訪問看護などの導入も検討しましたが、全く意味がなく(抑止にならず)、却って訪問看護の報酬が上乗せされるだけでした。

 

ある時は指示書を出すか、という話もしたのですが、結局支持義務違反をどう捉えるかの判断が難しいため、これも見送られました。複数の医療機関への通院がどの時点でダメなのか、それが本当に同一症状か、判断が難しいということでした。確かにずっと見張っているわけにもいかず、また同一症状かを判断するのがタイムリーにはできず、なかなか決定打に欠けるものでした。

 

1番対応が難しかったのが、当の本人が頻回受診の感覚がないことです。ちょっとその時の医師の診察が気に食わない、待たされた、薬局で生保のことを何かしら言われた、など、相手に対しての不満を他に通院することで解消しようとするだけでした。そして、むしゃくしゃになって薬を大量に飲む、という方でした。

 

結局、鎮痛剤のオーバードーズで搬送され、その後、他院に搬送されていきました。居宅退去の際に大家さんに立ち会いを求められましたが、大家さんも大量に転がっている薬をみて、生保はいくらでも薬をもらえるんだね、と言われてしまいました。

 

今思い返しても、どう対応すれば良かったか迷う方でした。