生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

生活保護制度の不思議さ

生活保護業務に携わってから、この法律・制度をじーっと見る機会が増えました。もっと言えば、真剣に「なんだこれ??」と考えるようになりました。

 

とかく、福祉職でもないので大学の講義などで福祉系の授業など受けたこともなく。単に地方公務員になってそういう部署に配属される可能性があるということを知るまで、あまりニュースでも気に留めてきませんでした。

 

私が住んでいたのは関東地方の神奈川県なので、確かに市営住宅や県営住宅などがちかくにありました。ただ、その住宅も「まだお金が少ないご家庭で、ここでお金を貯めて一軒家を買うんだよ」と考える人たちが多い、そんなことを幼少の頃に教えられました。なので、公営住宅にそういう生保受給者が数割いることに、この仕事に就いて初めて知ったぐらいです。

 

また、よく生保受給者とホームレスを混同する人がいましたが、私もその一人でした。全く違うものだというのを知ったのは、恥ずかしながら福祉事務所に配属になった時からでした。

 

自分が通っていた病院が生保指定医療機関であり、自分の診察の前の人が生保受給者だったこともありました。その時、お会計をしないで出ていくのを見て、不思議なものだなあと、この時医療扶助があることも知りませんでした。

 

よく「生保受給者は月13万円ももらえて、家にも住めて、医療費も税金もタダ、けしからん」という人がいますが、実際には家賃込みで13万円、住宅扶助の制限があることなどもこの仕事に就いて初めて知りました。月8万円程度のお金で、どれだけ生活をしていくか、自分ならどうしていくかと考えることもあります。

 

勿論、一度受給してしまえば残念なところ、死ぬまで受給し続ける方は多いです。どうやって抜け出すか、というより「あぁ、これで大丈夫だ」という考えが出てくるからでしょう。

 

不思議なもので、この制度を国は「一時的な生活支援」と考えていたのか「死ぬまで受給し続けること」を前提としていたのか。最後のセーフティネットと言われるぐらいなので、そのネットから脱却するために数々の支援策はありますが。高齢者であればその脱却も難しいのは理解できます。

 

肝心の年金を収めてこなかった人、それ故に最後の仕事を辞めてから貯金を食いつぶしてきて、それも尽きてしまった人、親族友人知人からの支援も無くなった人、こういう人は生保を受けないと生きていくことは難しいでしょう。

 

とすると、もはやそういう人に対して別の制度を作るべきなんじゃないかと思うのです。生活保護ではなく、生涯自立支援給付金みたいに、区分けするべきじゃないかと。

 

というのも、ケースワーカーの担当受給者の6割は高齢者なのです。実際問題が起きたりして大変なのですが、大体はもうケースワーカーが何か積極果敢に支援をする必要がない、支援のしようのない人たちが多いのです。しかし、色々な仕事は同じようにこなす必要があるのです。

 

この何もする必要のない、他方他施策で守れてお金だけの問題の高齢者については、もう少しやりようがあるんじゃないかなぁと、日々思ったりします。そうすれば、本当の意味でのケースワークがもっと活発にできるんじゃないでしょうか。