生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

困難ケースとCW その4

これは困難ケースというより困難事例かも知れません。

 

よくあるのが高齢者世帯で認知症になってしまった受給者の対応です。生活保護を受けている割合では高齢者が6割、7割ぐらいと言われています。地域差はあれど、やはり担当する受給者が若い、稼動年齢層ばかりという方は珍しいと思います。

 

その受給者でも、特に健康的な人、すでに病気ばかりしている人、様々ですが、私的に大変だったのが認知症が進行してしまった単身と、複数世帯の対応でした。

 

まず、単身世帯なのですが、とにかく動き回ってはどこかでトラブルを起こしてしまう方でした。前にも書いた通り、通常の社会生活を送っていれば受給者とその人達との間の話なので、福祉事務所は特に関与しません。と言えども、バンバン福祉事務所に連絡をしてくる方は多いです。

 

別に保護者でも身元引受人でもないのに、福祉事務所、行政に責任を背負わせる、もっと言えば組織内でも、生保受給者の起こしたことはケースワーカーが解決すべきという誤ったマインドの職員がいます。この点もまたいずれ書いていきます。

 

この動き回ってしまう受給者で、私が体験したのは、福祉事務所としても対応が難しい幾つかの例です。

 

まず、認知症の進行が分かった段階で包括支援センターと連携をし、介護認定を改める作業をしますが、当然すぐに認定更新はされません。その間、今の介護度でギリギリまでサポートを入れますが、当然隙間はできます。

訪問ヘルパーさん、看護師さんに来てもらうも、この時確か要介護1ぐらいだったので両方週1回がギリギリだった記憶があります。

 

当然30分とかのケアだけなので残りの時間は1人です。この時にフラフラと外出して、家の鍵を落とす、お金を落とす、帰れなくなる、などなど沢山の電話が入りました。

 

1番困ったのは鍵を無くして、家に入らなくなった時でした。水曜日で不動産会社が休みで、何をやっても家に入らない。午後4時くらいにスーパーの店員さんから電話が入って、迷子キーホルダーを見てかけてきたそうです。

 

80歳後半の方を一晩どこかにいかせることもできない。

福祉事務所で一泊なんて当然できません。

 

さて困った、鍵屋さんなんてものは呼べないし、窓ガラスを割れば当然住居破壊なので割ることもできない(当の本人も理解ができない)。友人知人もいません。

 

じゃあドヤに連れて行くのか、これもかなり困難でした。もちろん候補に入れましたが、現地からドヤまで歩くこともできない。

 

無料低額宿泊所も今からでは難しい。病院へ連れて行くか。

 

しかもアパート二階でしたが、、、、、すると、「あそこの出窓、開いているかも」という受給者の信じていいのか分からない発言をいきなりしてきました。

 

え、あそこ登るの?登れたら入っていいですか?と理解をしてくれているだろうと言うことで、許諾を得て、福祉事務所から応援を1人来てもらい、登りました。

 

配管を伝って開けてみると、開きました。カラカラと。しかし、腰高窓なので手で登らないといけない高さ。

 

もう、意を決して登りました。ダイハードでした。何とか頭から床に落ち、手を打ちましたが、中から鍵を開けて一件落着。

 

今考えても良くやったなぁと思いました。若さですね。

 

この頃、2日置いてだったか、施設入所をして今もご存命だそうです。当然本人は、この時の話、何も覚えていません。