生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

生活保護とペット

何かのネット記事で、生活保護受給者はペットを飼ってはいけない、手放さなければいけない、と言うのは嘘という記事を見ました。

 

さて、現場の話をしますと、半分合っていて半分間違っています。受給前から飼っていて、それをそのまま飼い続けている方は少なからずいます。

 

ただ、やはり生活保護費からあらゆる費用を捻出しようとすると、一人分の保護費でペットを飼う余裕はあまりありません。ペットの餌代、トイレなどの身の回りのもの、病気になった時、予防接種などなど。ペットにきちんとした生き方をさせるならば、それだけお金がかかります。

 

時折、この何年も狂犬病の予防接種を打ってないわんちゃんを飼っている受給者がいます。最後に打ったのは2012年ぐらい、と言う方がいました。流石にこの時は、そーっとわんちゃんに噛まれないように距離を置きました。

 

よく、ペットは家族と一緒、離れることなんてできない、と言う方もいますが、だからこそペットにきちんとお金をかけてあげるべきだとは思います。掛けられないなら、やはり手離して違う飼い主さんにお世話になる方が、そのペットにとって幸せなんじゃないかとは思います。

 

さて、ケースワーカーをやっていて、ペットを飼っている世帯を持つと恐れる例を。

 

1 その世帯が入院などをした時

まず、預け先がありませんのでどうにかして自力で育ててくれる方を探してもらいます。当然福祉事務所では面倒は見れません。たまに、薄情だなどと言われることがありますが、こればかりはどうしようもできません。自己責任です。

大変なのが緊急入院の時。福祉事務所に大家さんから連絡が来て、犬を連れて帰れなど言われたりします。突っぱねますが、かなり酷いことを言われたりします。

 

2 その世帯が転居などで新しい家を探す時

これも困ります。今のアパートが建壊しになるから引っ越しが必要になる時、ペットがNGのアパートは非常に多いです。これは、住宅扶助で入れるアパートだと仕方ないのかもしれません。本当に稀です。ほとんど見かけたことはありません。そうすると、やはりペットがネックになって転居先が見つからないと言うことがあります。これも福祉事務所ではどうしようもないことです。

同じように施設入所になった時も大変です。基本、高齢者施設ではペットを飼うことはできません。たまに、ペットと一緒に生活できる施設、などと触れ込みをしている施設もありますが、これも稀です。高額な有料老人ホームならありますが、通常の料金、生活保護の範囲で入れる施設では、これも見たことありません。

 

まぁ、確実にトラブルになります。好きな人もいれば嫌いな人もいます。

 

もう一つ辛いのが、認知症が進行して自分の生活すらままならなくなった人のペット。排泄物に塗れたまま、餌も与えられず鳴いている、なんてことはザラにあります。周りの住人が心配になってきてたみたいですが、当の本人を施設に入れるのに精一杯なので、我々福祉事務所では何もできません。

 

たまたまその親族が引き取ってくれましたが、それでもかなり恨言は言われました。

 

3 その世帯が亡くなった時

1番困り、福祉事務所で何もできないパターンです。一度だけこれは対面しました。家で亡くなってしまい、そのペットがずっと鳴いているのを近所の方から通報があり、大家さんが家の中を見ると、ペットがご遺体の近くにずっといたそうな。持病はあってもまだまだ長生きされそうな高齢者だったので、かなり驚きました。

 

さて、このペット、猫ちゃんの処遇について。この猫も高齢だったそうで、やはり引取先が見つからず、また福祉事務所に何度も何度も連絡があり、何とかしろと言われましたが、どうしようもなく、最終的に保健所を頼るしかないことは伝えました。

 

これもかなりきついことを言われましたが、、、最後は近所の方が引き取っていただいたそうです。

 

ということで、ペットを飼ってはいけないわけではないのですが、その処遇に責任を持たないのであれば、どうしても福祉事務所としては手離してもらう指導をせざるを得ません。

元気な間はいいのです、余裕がまだある時は、まぁそんな厳しいことは言わないのですが、やはり人間何があるかわかりません。それゆえに周りの人を巻き込んでしまい、何よりそのペットの環境や命の危険に晒してしまうことや、受給者の今の生活を困窮させてしまうことが問題なのです。