生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

入居者の特徴~精神疾患者編(総論)

 精神疾患を抱える受給者、いわゆる心の病を抱えられていて仕事ができず、生活保護を受給している。そのような世帯は近年増加傾向にあります。精神疾患については本当に様々な症状がありますが、どれも短期間での治療が難しく、数か月、数年、数十年と長期療養生活を送っている方も珍しくありません。

 

精神疾患とアパート入居

 新規でアパート入居する際に生じる問題です。相談している不動産会社さんから、精神疾患の方は入居審査できない、NGとしていると言われて断られてしまうことがあります。

  • 精神疾患者は何をするか分からない。
  • 暴れたりするので、近隣住民とトラブルを起こす。
  • 何もせず日中ずっと家にいるのは理解ができない。
  • 家賃を滞納する。

 不動産会社と大家さんからNGとされた理由でした。いわゆる世間の偏見、誤解といった内容が含まれていること、精神疾患と直接関係のない理由にも思えました。うがった意見ではあったのですが、NGと言われてしまえば福祉事務所から何かフォローができるかといえばできず、別の物件を探すよう受給者に助言をしました。

 

もう少し、精神疾患受給者について理解してみる

  一言に精神疾患といっても、その病状によって全く対応が異なります。一般的に精神疾患というと、うつ病パニック障害などを想像されるかもしれません。

 

 しかし、実際には「広汎性発達障害」、「ADHD」、「睡眠障害不眠症)」、「自閉症スペクトラム」、「アスペルガー症候群」、「学習障害」、「双極性感情障害」、「不安障害」、「統合失調症」、「パーソナリティ感情障害」、「適応障害」、LGBTトランスジェンダー等々、様々な症状を抱えている方全てを、まとめて精神疾患者としています。そのほかに、診断名がついていない予備軍、グレーなどと称することもあります。

 

 あくまで一例ですが、ずっと自分の話したことのみ話す、自分の都合の良いようにのみ解釈する、〇〇でないと絶対にダメなど、特定のこだわりを主張される方もいらっしゃいます。この症状は、服薬で回復するものもあれば、先天的なものも含まれること、また複数要因を抱える事例もあります。

 

 例えば、ADHDでありながらうつ病を発症する、パニック障害でありながら適応障害もあるなど、元来の知的障害が原因で、うつ病パニック障害を発症するなどの例もあります。何より、目に見えづらい障害であるため周囲から理解されないという悩みもあります。

 

 覚えておくべきことは、単に精神疾患うつ病ではないことです。

 

精神疾患者は自分の病気を不動産探しの時に相手に伝えるべきか

  この質問をよく受給者側から聞かれます。一言でいれば「本人の思うままに」と助言しています。病気であることを隠したくない人もいれば、積極的に言わないと気が済まない方、本当に様々です。ただ、福祉事務所としては「言わなくてもいいことは、別に言わなくてもいい」というスタンスです。

 

 時々、不動産会社さんから「〇〇さんが入居申し込みをしている。保護受給しているようですが、何故仕事していないんです??精神疾患ですか??」と聞かれることがあります。勿論、個人情報なので福祉事務所としては「〇〇さんは体を壊してお休みされているようです。あとは本人に聞いてみてください。」と、一般的な回答しかしません。

 

大家さんとしてどう対応するか

  どの入居希望者にも同様ですが、大家さんは必ず審査時に立ち会いをして、どんな人なのか、ご納得されたうえで入居決定する。これが必須だと考えます。その者が精神疾患なのか、単なる傷病者なのか、何もないのかはその人を見ても分からない場合があります。であれば、やはり自身の直感で決めていく、入居希望者と話をしてみて決めていくこれが一番のリスクヘッジかと思います。

 

 そのうえで、住宅代理納付制度は使えるか、緊急連絡先になる者はいるか、敷金礼金2か月分ずつもらえるか等を考えていくことが必要です。

 

精神疾患者と家賃滞納

  非常に個別的な話になるので一概には言えませんが、よく大家さん等から精神疾患者はすぐにお金を使い込んで、家賃を滞納する。だから入れたくない。」という不安があるようです。前述した住宅代理納付制度を使い、家賃と管理費・共益費を福祉事務所から直接払ってもらえば、滞納リスクは防げます。住宅代理納付は一度設定してしまえば、世帯収入に大きな変動がない限りは継続されるものです。保護開始時や転居時に設定することを強くお勧めします。

 

 問題は更新料の支払いです。住宅代理納付ができないもので、更新料や火災保険料などは直接受給者から受け取る必要があります。

 しかし、受給者が体調不良により外出ができない、会話ができないなどの症状が出てしまうと、福祉事務所に更新料の請求ができないまま更新期限が来てしまうなども珍しくありません。

 不動産会社さん等から、「〇〇さんからまだ更新料をもらっていない、どうなっているか?」と直接福祉事務所に連絡をもらって、CWから受給者に連絡をして、請求を促すなどもよくあります。福祉事務所に来ることもできない場合、本人宅まで伺って不動産会社から来た書類一式を預かる、支給決定をするなどの手続きを行ったりもします。

 

 大家さん、不動産会社さんは確実に更新料を受け取るため、本人と一緒に福祉事務所に訪れ、支給された更新料をその場で受け取り、更新手続きを行うこともあります。

CWの目の前で全て手続きを行い、領収書なども受け取りますので手間は省けますが、大家さんも不動産会社さんも一手間かかる作業です。

 

 残念ながら、現行法では更新料等を直接大家さん、不動産会社さん等住宅代理納付先に直接振り込む制度がありません。

 

CWから見る精神疾患受給者

  最後に、精神疾患は本当にその方その方で全く症状が異なるため、支援にも正解はありません。精神疾患だから人に迷惑をかける、家賃滞納する、部屋を汚す等言うことは全ての方に当てはまるわけではありません、

 

次からはもう少し、精神疾患の受給者について記載していきます、