生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

入居者の特徴~母子世帯編

母子世帯の生活

 色々な受給者の特徴 - 生保アパート経営塾のとおり、母子世帯は主にシングルマザー世帯であることがほとんどです。通常は一般のファミリー入居者とそれほど困る点は変わりません。

 子供の泣き声、騒音等いわゆる隣人トラブルです。これは、生活保護を受けていても対応は同じで、隣人間で何とかしてもらうことにしています。

 

 ただし、このトラブルがエスカレートしてきて、いよいよ周りとの雰囲気が険悪になってきた場合は、福祉事務所として退去要件として引越しを認める場合があります。

 

 大家さん、不動産会社さんからはやんわりと「周りも気が立ってしまっている。退去は考えませんか?」と話をして、さっと退去していった例はあります。

 勿論、本人たちからの自発的な退去は認められませんが、それ以前から苦情等で困っているという話が出ていれば、福祉事務所としても断り切れないという点で認めていく形になります。

 

 そのほか、シングルマザーの世帯ですと、あまり大家さんが貸したがらないという話も聞きます。いわゆる「訳アリ」な世帯と考える方もいらっしゃるみたいですが、福祉事務所としては生活状況が整っていれば、特段アパート生活をNGとすることはありません。

 

母子世帯の支援の難しさ

 母子世帯全てで、母親が働いているというわけではありません。

 生活保護の世帯を考えてみると、保護を受ける理由が複数ある場合があります。

 

 例えば、

  • 母親が病気がちで、就業できていない。
  • 過去のDV被害により、心に支障をきたしている。
  • 不安障害、パニック障害統合失調症精神疾患がある。
  • 身体不自由。
  • 過去に複数の子供を養育できず、施設(児童養護施設)へ預け、現在第〇子のみ自分で育てている。
  • 外国人

 など。そのため、支援する際には単に就労指導や子供の就学指導だけでなく、このような要因を加味していかないとならない難しさがあります。

 

 実際、こういった要因を見ずに「シングルマザーで生活保護は恵まれている。」という批判をする方がいます。母子世帯で支給される各種手当(生活保護法では、一部手当は収入認定の除外があり、手当を生活費に+αできます。)、免除制度、複数世帯のための保護額等見ると、お金という面では手厚いのかもしれません。

 しかし、単にその制度のみに甘えて生活をしているわけではない面も、しっかり協調される必要はあると考えています。

 

本当に困った母子世帯の困難事例~異性関係

 母子世帯で時折起こってしまう「付き合っている異性がアパートに上がり込む、居候状態になる」事例。生活保護法上、確かに異性と付き合うことなどを禁止はしていません。しかし、「異性と同居状態」になると話は別で、福祉事務所としても対応に非常に苦慮することがあります。

 

 生活保護法上、例えば母と子の2人世帯のところに異性が入ってくると、世帯としては3人世帯として考える必要があります。

 これは、婚姻関係になくともです。一つ屋根の下で生計を共にしていれば、世帯で考えます。この「世帯」の考え方が非常に厄介なのです。

 仮に、この母子世帯が生活保護を受けていることを異性が知らない場合、生活保護法の説明をすることが難しく、また当のシングルマザーから了承が得られない場合が多いです。

 非常に身勝手な話なのですが・・・非常に世間からの批判を受けやすい・・・のですが。

 CW時代、この事例に1度当たったことがあったのですが、対応に苦慮した事例として自分の中で残っています。

 

 この世帯は

  • 生活保護を受けていることを付き合っている男性に知られたくない。
  • 子供も懐いてくれている。遊んでくれたりする。
  • 現在妊娠中。4か月になる(交際中に妊娠させてしまったようです。)
  • 行く行くは結婚するつもり。ただ、相手が今は離婚調停中。慰謝料の話で揉めている。
  • 相手からは今は生活費をもらえていない。ただ、慣れるためにも同棲は続けたい。

というもの。

 男性は結局、出産費用も出さず別れたそうです。そして、生まれてくる子供を認知もせず、未婚の母として1人世帯が増えました。

 

大家さんと母子世帯の関係

 大家さんとの関係でいうと、契約条項に「単身用アパートである」「2人用である」などと取り決めをしているものを見かけます。

 非常にリスクヘッジがなされているもので、勝手に世帯員が増えると、それを知った大家さんがかなりの剣幕で退去を迫る場合があります。

 また、この付き合っている異性が転がり込んできた事例も、実際他の入居者から大家さんに話が入って発覚。福祉事務所にも「保護受けておきながら、男性と付き合っている、同棲を認めているなんて、どういう指導をしているのだ!?」と大家さんから怒られた事例でした。

 

 もし今後、こういったトラブルを避けるためには、やはり契約条項にあらかじめ入居人数を制限しておく、条項違反するような入居者をそのまま受け入れていくのもリスク高いと思われます。

 勿論、入居者自ら「妊娠、世帯員が増えるので転居します」と明るいニュースで契約解消を申し出てくれる方であればいいのですが・・・。