生活保護受給者の入居が認められるアパートは、決して豊富とは言えません。住宅扶助額を上回る家賃のアパートには原則住み続けることができず、また上回るアパートへの転居は自己負担となっても認めることができないためです。
勿論、巷には生保アパートを経営することに長けている大家さん、古くなったアパートをうまくリフォームして貸し出す大家さん等いらっしゃいます。
よく、生活保護受給者が住んでいた部屋に新しい生活保護受給者が入居するというパターンがあります。前の受給者が何かしらの理由で退去となり、空いていたためでしょう。
地区担当員をしている時代の場合、自分の担当地域で転居があり、担当受給者が1名いなくなったなぁと思っていると、別の課、係から新たに転入してくることがあります。自分の担当地域に新たな入居者が入ってくると、担当変更として受給者を引き継ぐことになるため、1件増えるのかぁーと、あまりいい気持ちにはなりません。
受給者が転居する際には基本的に自分自身で物件を探してきます。内見をして、あとは福祉事務所に報告して、許可出れば転居費用を出してもらってという流れです。
福祉事務所内では、転居しようとしてる地区の担当員に「〇〇荘って誰かほかに入っていますか?」「▲▲アパートって、問題ありますか?」といった確認作業があります。
具体的にどんなことを確認するかというと
- 入居しているほかの受給者や、一般市民でトラブルメーカーがいないか
- 大家さんや不動産会社さんの対応は面倒でないか
- アパート設備に問題がないか
- 周辺環境に問題がないか
- 担当地区が福祉事務所内で完結するか、ほかの福祉事務所に移管するか
難しいのが、どこまで転居先物件を確認するか、です。
上の確認作業について、各CWで温度差はありました。基本はその転居先物件が生保受給者入居ができる基準の物件であれば、入居を止める権利は福祉事務所にありません。転居要件が大事なので、物件自体はそれほど重要視はしません。家賃とそれに合致する㎡数を持っていれば、受給者が絶対にここに転居する!となると、認めざるを得ません。
CWも、受給者自身が良ければ、まぁどうぞという感じでOKします。CWとしては、転居が住めば新しい担当者にいつ引き継ごうか、こういう頭になりがちです。
特に疎かにするのが、周辺環境でしょうか。例えば、かなりの高齢者が転居をしなきゃないのに、転居先が坂道ばかりでスーパーや病院が少ない地域だと、転居すると非常に苦労します。それを転居先の地区担当員が知っているにも拘らず、聞かないで転居を進めると、あとで「こんなところに転居しなきゃよかった」と言われることも。「ご自身で決めた物件なので仕方ないですね、内見の時に、周辺環境は確認しなかったのですか?」と質問するのですが、愚痴ばかり言われることもあります。
過去、自分の地区に転居してくる人がいると、その確認時に必ず「このアパートは階段が急」「周りにスーパーがあったが閉店した」「病院が少ない」「バス停から遠い」など、ネガティブな情報は伝えていました。そして、「事故物件」であるか否かも伝えます。自分が担当していた受給者が居宅内で亡くなっていれば、その事実は当然理解しています。
しかし、福祉事務から受給者に直接この事実を伝えることはしません。福祉事務所が事故物件であることを知っている=前に受給者が住んでいた=この物件は生保アパート=周りも生保??という印象が受給者に付いてしまうことと、何より不動産会社さんが伝えていないことを、福祉事務所として伝えるべきものか判断ができないからです。
しかし、実務を経験していると、殆どの物件で「当該物件は事故物件」という告知がなされていません。いつも、何故だろう?と思っているのですが。。。。。。。。
一般的に事故物件の場合、心理的瑕疵とみなされ瑕疵担保責任に問われることが宅建業法上、規定されています。事故物件の定義は厳密なものはなく、大家さん、不動産会社さん等の考えによるようです。
単に事故物件の定義の認識が違うのか、定かではありません。受給者には「何か事故とか事件がなかったか、気になるなら聞いてみると良い」と助言することはあります。
事故物件であることを気にする方もいれば、別にどうってことない、家賃が下がって入居できるんだからいいよという方もいます。また、いわゆる公営住宅では、その募集要項に事故物件である旨の記載、そこでどういう人がどういう形で亡くなっていたか(病死、死後〇日後発見等)記載があります。
公営住宅の事故物件は比較的空いていることがあるので、気にされない方は募集があるとすぐに申込をされます。中もリフォームされていることがほとんどなので、気にならない方であれば応募を勧めることはありました。