身体障害者とアパート入居
身体障害を抱えられている受給者の場合、古くからアパートに住んでいる、そのためなかなか離れられない方が多い印象です。退去勧告が出ているが足が不自由、目が不自由で新しい場所へ移動できない、既に受けている障害サービスもあるので、新しい場所へ移動が難しいという相談を受けます。
特に古くなったアパートに住んでいて、その建物が取り壊しになる場合、立ち退き勧告を出されますが、この勧告に対応できないことが多いです。精神疾患の方ですと、早く問題を解決したいと新たなアパートを自力で探してくる方が多いのですが、身体障害を抱えられていると、そもそも不動産会社へ行くことができない、前述のように障害サービスの利用が中断されてしまうと今後生活ができないので、引越に不安という訴えは多いです。
大家さんとしては、早く引っ越しをしてほしいという気持ちもあり、かなり福祉事務所にプレッシャーをかけてくる方もいますが、受け入れてくれる物件がない以上、退去手続きも進まないことが非常に多いです。
勿論、身体障害者の方々を支援する団体、相談事業所は多くあります。しかし、その方々が不動産会社へ行って物件を決めてくる、入居の移動をさせるといったところまではできないのが実情です。
福祉事務所でも支援が難しい身体障害者の引越支援
例えば、足が不自由で車いす移動の受給者の場合、頑張ってCWが車いすを押して不動産会社へ行くことはできます。しかし、その後の内見の時の移動支援、階段があればその昇り降り、支援の素人であるCWが手を出せる範囲を超えています。
障害サービスのヘルパーさんも、支援のできる範囲が決まっているため、このような支援ができるかはその受給者(サービス利用者)の利用量、障害の程度に準じることになります。誰もが潤沢なサービスを受けられるということではありません。
特に一番困るのが内見です。少しの段差、障害物があるだけで部屋の中にもたどり着けないで帰るというケースは多いです。
身体障害者は公営住宅へ入居させるべきか
これもよく相談されますが、公営住宅であっても抽選方式が多いため、誰も彼もが入居できるわけではないのです。福祉事務所としても、公営住宅の入居を勧めることはありますが、受給者からは「申し込んでも当たらない・・・」と言われることは多いです。
最近の公営住宅はバリアフリー化されているところ、エレベーター設置されているところが増えているため、例え築年数が経っていても、住みにくいというレベルではありません。公営住宅に福祉用具などを設置もレンタルでできますので、入居さえできれば居宅生活を続けることはできます。
公営住宅の新規建設は各自治体で抑制傾向にあります。入居できない方が多いのが非常に問題です。
身体障害者は障害施設へ入居させるべきか
これも同様に相談があります。しかし、各自治体とも障害施設の新規整備が難しいのが現状です。昭和~平成初期には建設も進んでいましたが、最近は国の方針で、施設ではなく在宅での生活を中心に考える(これもどうかと思いますが・・・)のため、新しい施設を作ることは非常にハードルが高いです。
また、近隣住民からの苦情、土地の不足、建設コストの高騰なども問題になっていることや、そこで働く専門職員の不足なども課題となります。
何より、施設に空きがないため、立ち退き勧告となったから施設に入るという選択肢が取りづらい点もあります。さらに、これまでアパートで(多少の不自由があっても)生活をしてきた人にとって、いきなり施設に入るというのは気が進まない(=自由がなくなって嫌)という話もあります。どうしても、新たにアパートを探す必要があります。
住宅扶助特別基準の適用
さて、以前掲載した住宅扶助基準表ですが、この中の特別基準というところに着目します。
特別基準は、国の定めた事情に該当し、一般基準では住宅が見つからない場合、最大で69,800円/月(東京都23区、15㎡以上の場合)まで扶助上限額を引き上げる制度です。
一般的には
- 足が不自由で常時車いすを使用している。その導線確保のために広い廊下幅が必要。常時介護ベッドにいるため、広い居室が必要。
- 一般欲に入ることができず、障害サービスの訪問入浴サービスを利用する。そのためのスペースが必要。
といった、生活、サービス利用するために必要なスペースを要する場合、この特別基準の適用が検討できます。
※時折、高額家賃であるが、精神疾患が原因で引っ越しができない。そのため、家賃上限額を69,800円/月を認め、転居させないという理由で特別基準を認めてしまうCWもいますが、誤りです。都道府県の監査で指摘が多く出ます。あくまで生活に必要なスペース、の面で考えます。
私がCW時代の時、特別基準を認めたのは「車いす利用で、階段昇降ができない。かつ、訪問入浴サービスの利用が必要」という受給者に対してでした。
特別基準は非常に限定された制度のため、単に障害の有無だけで適用されません。この特別基準が活用できる受給者であれば、大家さん、不動産会社さんも一般基準を上回る住宅を紹介できるため、やはり身体障害のある方に対しては積極的に福祉事務所へ提案をしていく必要はあります。
そのほかは従来通り、住宅代理納付制度を活用、更新料などの請求も福祉事務所に一報して支援をしてもらうというところを活用していく必要があります。
CW経験からみる障害者世帯
身体障害を抱える受給者は、やはり色々なサービス、工夫をして生活をしています。そのため、周りが思っている以上に生活力があります。安易に施設入所を勧めず、居宅生活を提案、アパート転居を提案していくことが福祉事務所としても取っていきたい方針であることが多いです。