生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

生保受給者の物件選び(転居後)

 yoko2020.hatenablog.com

この続きとなります。

物件が無事に決まり、初期費用も支払いが終わるといよいよ転居です。転居時には、生活移送費で引っ越し代を受給者に支給することができます。世帯人数、距離と荷物の量にもよりますが、大よそ10万円程度、エアコンの移送などがあるともう少し高めでしょうか、多くても20万円ぐらいに収まるといいかなという印象です。

 

転居が終わると住民票を移し、いよいよ地区担当員が転居先に家庭訪問をします。これを転居確認と言います。何故、転居確認をするのか。それは、

  • 受給者がどこに住んでいるかを把握するため
  • 生活が成り立つための家財等が揃っているか
  • 本当に決めてきた物件に転居しているか
確認するためです。
 
特に3つ目の理由について、受給者が転居したことを一向に連絡をしてこないことがあります。痺れを切らしてこちらから連絡すると、転居確認することを拒否します。
埒が明かないので引越ししたはずの家に行きますが・・・転居先に行ってもいない、ということがあります。初期費用と引越代をもらった後、勝手に違う物件に転居してしまうことがあります。
 
何故そんなことが起きてしまうのか。資金面では、不動産賃貸の契約時に初期費用が必要となり、前渡しが必要なこと。そして、引越代金も引越作業開始時に半額渡すなどの業者が多いためにこちらも受給者に前渡しになります。お金が一気に手に入るので、勝手に自分の好きな物件に引越ししたりすることができてしまいます。
何とか福祉事務所で事情を聞くと、引越日当日に嫌になって止めた。転居費用をもらって自分はもっと違うところへ行きたくなった等、正直に言うとかなり身勝手な理由が多かったです。
 
福祉事務所は一旦支給した転居費等、その目的に合致をしていなければ返還請求をします。ただ、実際に転居それ自体は達成できてしまっているので、その物件が住宅扶助を認める基準内の部屋であれば、そのまま転居を認めざるを得ない場合もあります。
非常に中途半端な結果になりますが、そこから再度転居させようとすれば同じように費用がかさんでしまうため、「無駄遣い」と考えられます。
 
こういう場面に遭遇するたびに、生活保護制度の甘さを痛感することがあります。
 
そのため、時折CWでは実際に不動産会社との契約の初期費用を、不動産会社へ直接持参し、眼前で契約をしてもらう、引越時の立会い、転居先まで着いていくなどをする場合もあります。受給者からは「そんなに信用できませんか?」と言われたりもしますが、こういう事件が起きてしまうと我々も慎重にならざるを得ません。
 
さて、転居が無事に終わりますと、その数日後に転居確認へ行きます。
新しい部屋がどこか、既に生活の基盤はできているかを確認します。実際行ってみると、きちんと家具が揃っていたりもしますが、中にはエアコンがない、照明器具がない、カーテンがない等あります。その場合は家具什器費を支給して買い揃える費用を支給します。
 
生活が落ち着いたらいよいよ、新しい担当者へ引継ぎをします。その前に、大家さんや不動産会社さんへ支払った初期費用の領収書、契約書、前の家の家賃の清算などをしっかり終えてから引き継ぎます。
場合によっては新たな住宅代理納付の設定などを行います。