生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

住宅扶助と支給される入居費用、その手続き

 住宅扶助と㎡数

 

 生活保護法では住宅扶助という制度があり、アパート等に居住するための家賃や入居時の敷金、更新時の更新料が支給されます。

 東京都23区の級地ですと、以下の表になります。

 

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※令和2年4月時点の基準表を元に算定。具体的な額は各福祉事務所へお問い合わせください。

 

 例えば、賃貸借契約書で18㎡、53,700円の物件であれば、基準㎡数15㎡を超えているため住宅扶助上限額53,700円を認定することになります。

 また、㎡数を満たさない場合であっても、キッチンやお風呂、トイレを備えているなどの設備が充実している物件であれば、+αで㎡数を加算して上限額を認定することもあります。こちらは運用ですので、具体的な条件は各福祉事務所にお問い合わせください。

 大よそ15㎡を超えている物件であれば、6畳+キッチン程度の間取が想定されます。家財の量にもよりますが、1人で暮らすには十分な広さではあります。

 

 

 転居費用で支給される項目

 

 受給者が新たにアパート入居する際、一般の方と同様初期費用が掛かります。生活保護法では転居時には上記表のとおり、支給上限額の範囲内で敷金等を支給し、転居支援を行っていきます。

 例えば、家賃53,700円の物件へ新たに引越をする際に、東京都内であれば

 

  • 入居時2か月分の前家賃(当月日割+翌1か月分)※敷金等の上限額には該当しません。
  • 敷金(1か月分)
  • 礼金(1か月分)
  • 火災保険料
  • 賃貸保証料
  • 仲介手数料

などであれば、ほぼ自己負担なく転居をすることができます。敷金等に該当するのは、家賃以外の項目になりますので、かなり多く支給することができます。

 物件を紹介する不動産会社さんも、生保受給者の場合は上限額を考えて初期費用を計算します。

 特に、敷金・礼金は転居時にしか支給されませんので、この時に確保しておく必要はあります。敷金はその後の退去時や家賃滞納時に保全の要素もありますので、多く確保しておく方が良いです。 

 

 初期費用の支給方法

 

 各福祉事務所で異なるかもしれませんが、私のところでは

  1. 受給者が転居した物件を不動産会社へ行って見つける。
  2. 見つけて内見をしたら、間取図を福祉事務所の担当CWに渡す。
  3. CWは物件や地域を見て、転居可能の物件か確認する。この時、自分の自治体内、管轄内であることが条件(勝手に別の自治体の物件を持ってこないようにする。)
  4. 転居可であれば、不動産会社から初期費用の見積もりをもらう。
  5. CWはその見積もり表に基づいて支給額を決定。
  6. 定められた日に来所等して敷金等を受給者本人に渡す。
  7. 受給者は契約しに不動産会社へ行き、賃貸借契約を結ぶ。
  8. 契約書類や領収書を福祉事務所へ提出する。

という流れです。

 大事なところは、2の内見です。受給者は自分の都合で勝手に他所に転居をすることができません。転居する場合は、予め福祉事務所の許可を得る必要があります。許可のない転居では、敷金等初期費用の支給はされません。受給者は今後住むであろう家のため、キチンと内見をして気に入る物件かを確認します。

 

 また、7の契約ですが。殆ど例はありませんが、3年に1回ぐらい、支給した敷金等を持ってそのままどこかへ失踪してしまう受給者もいます。その場合は所在不明として保護の廃止を行ったりします。大金のため、目がくらんでしまうのでしょうか。

 

 

  転居費用を払っていよいよ引越。

 

 引っ越し費用は一時扶助の生活移送費で支給されます。引っ越し業者を数社選び、見積もりを取って一番安価なところを選んでもらいます。

 また、この時に福祉事務所でも知っている引っ越し業者がいるので、紹介をしたりします。

 引っ越し費用には支給上限額がありません(原則、見積もりを取るのであまり高くなりにくいのですが、制限をつけてしまうと転居ができない場合があるためでしょうか)

 

 あとは転居後にその本人の家に転居確認をしに行きます。転居確認時には、不足している家具什器はないか、部屋は片付いているか等を確認していきます。

  

 このため、転居する際に殆ど受給者は自分のお金を使うことはありません。

 よく「お金がないから転居できない!」と訴えられる方もいますが、物件が見つかり、その物件が転居可の物件であれば、費用面では特に心配することはありません。