生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

家財処分の立会い その2

さて、本人(の親族)から同意が取れたところで、いよいよ居宅に入って家財処分の手続きです。この時、同行してくれる人間を数名連れていくことが必須となります。今回のように高齢者で既にケアマネージャーさんやヘルパーさん等が入っていたのであれば、一緒に来てもらいます。そのほか、大家さん(この件では近隣に住んでいたので、当日立会いをしてもらい、アパート居室の付属物を一緒に確認、いるものといらないものを教えてくれました。)、家財処分を行う業者さんと一緒に行きました。

 

まず、CWがというか、行政の人間が一人で家主不在の家に入ることはしません。あまりにリスクが高いからです。少し横道にそれますが、たまーに受給者が救急搬送で入院し、「何も家から持ってこなかった、CWに家に取りに行ってほしい」とお願いされることがあります。しかし、私含めて対応することはまずありません。なぜなら、家主不在の家に入って何か事件事故が起きた時、確実に問題になるからです。

 

 もし善意で、受給者宅に荷物を取りに行ったとしましょう。受給者から退院後、「〇〇が無くなっている」「〇▲が壊れている」と言われたとき、対応のしようがありません。ここで盗まれた、壊されたとなればCWとして反論する材料がないのです。まさかそんなこと、起こるわけないということが起こりえるのが、この仕事なのです。

 

こういう場合、私なら「友人、知人に頼んでください。」「鍵を持っている大家さんに相談してみださい。」と他者に投げます。

 

さて、この家財処分での立会いの際にもかなり神経を使います。たまに、業者と担当だけでいくことがあるのですが、非常にお勧めができません。何かあった時、不祥事扱いされる可能性が高いからです。今回のように、既に意思疎通が取れない受給者であっても、福祉事務所の職員は2名で対応することが多いです。

 

今回の例ですと、複数名で居宅に入りまして各々作業をします。私たち福祉事務所の職員は特にやることはありません。業者さんに処分の見積もりをしてもらい、後日いただく、あとは大家さんと業者さんとで撤去完了日の打ち合わせをする程度です。もしやるとすれば、例えば福祉用具などのレンタル品の確認(これも、ケアマネージャーさんとか一緒に来てくれれば特に見落とすことはありません)、付属物の確認(大家さんに判断してもらいます)位でしょうか。

 

受給者宅は何度も入っていますが、やはり出てくるのは、

  • 大量の小銭(数万円になることあります。沢山落ちています。こういうのも全部業者さんに回収してもらい、受給者に渡します。)
  • 薬(残薬が山のようにあることも)
  • 未払の請求書(電気、ガス、携帯代など。基本、CWが代行で支払うことはしません。)
  • 行政機関からの手紙(未開封。福祉事務所からの連絡も開いていないことも)
  • どなたかの遺骨(骨壺ごと)
  • 仏壇(宗教関係の物を含める)

大家さんにはその場で福祉事務所が代理でアパート退去の連絡、家賃が当月までで終了となること等を告げます。撤去がすべて終われば、大家さんとしても特に文句が出るものではありません。

 

実際、家財処分となると貴重品と呼ばれるもの以外は全て廃棄してもらいます。取っておく術がないからです。骨壺を廃棄するなんて、死者への冒涜だ、仏壇を捨てるなんてという声もありますが、生活保護制度ではこういうものを預かる制度はありません。これが最低生活を営むための制度だからです。

 

多少の衣服位見繕うこともありますが、今回のように今後も入院生活となれば、衣服も必要がないのです。

 

30~1時間程度終了してCWは退室し、後日全て荷物が無くなった部屋を大家さんに確認してもらい終了。

 

CWとしてやることは、大量の小銭が出てきた際の金銭管理位です。よく、金融機関に持っていけばいいじゃないかと言われるのですが、最近、金融機関もゴミが混じっている小銭などを受け取ってもらえず、一旦全て手作業で確認することが多いです。

 

困るのが、先ほど出た未払の請求書。福祉事務所では、手元にお金がないので支払うことはできません。また、受給者の保護費を充てることもできません。確かに、これまで保護費を支給しておいて、受給者が払っていないのだから保護費の無駄遣いだと言われるですが、支給した保護費はやはり本人しか使えないのです。

 

若干ドライな気持ちにならないとぱっぱと作業が進まないのが、家財処分の難しさです。