生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

ケースワーカー役割 その5

CW業務で日々大変だなと思うことに、突発的な対応に追われることがあります。よく起こるのが、受給者の緊急事態です。

 

例えば受給者宅へ定期訪問した際、高齢者である受給者から「最近体調悪いんだよね」と相談されたりします。これはよくあることで、お決まりのようにCWは「じゃあ病院行かないとダメですよね。医療券を病院に送っておきますから、受診しましょうね」と助言して、その日は帰宅。

 

数日経ったある日に、この受給者の住むアパート大家さんから連絡が入ります。用件としては、「今月の家賃がまだ振り込まれていない、どうなっているのか」という話です。※過去にも記事にしましたが、大家さんとCW業務についてはまた後日記事にします。

 

そう言えば前に訪問した際に「体調悪いんだよね」と話をしていたことを思い出します。一応、受給者に電話をするも出ない、さて困った。

 

別にCWが主に直接家賃を取り立てる必要はありません。アパートの賃貸借契約は大家さんと受給者なので、他人の福祉事務所職員が横槍を入れるところではありません。しかし、そうは言っても体調が悪いことを聞いてしまっていること、電話にも出ないとなると、次取る方法としては再度の訪問が一つ考えられます。

 

頑なに訪問しない、手紙を送ったりするだけにとどめるCWもいたりします。ただ適切な対応としては、この時点で上司である査察指導官に相談。どういった対応をすべきか指示を仰ぐか、一緒に受給者宅へ着いてきてもらうお願いをするが妥当なところでしょうか。

 

もしこの時点で、主の命に関わる状況であれば、訪問時にアパートの鍵を開けてもらうよう大家さんや不動産会社さんに同行を依頼することも考えられます。福祉事務所職員だけでは中に入ることができません。もし居室内で倒れているなら救急搬送の必要が生じますが、この対応が遅れてしまったりします。

 

大家さん等と査察指導官と一緒に受給者宅に着き、再度ノックするも不在、恐る恐るドアを開けてもらい中に入ると、そこに衰弱している受給者がいる。予想通り、居室内で体調不良が悪化し動けなくなっていた、すぐさま救急車を呼んで搬送をお願いします。

 

困るのが、救急隊がCWも一緒に乗って欲しいと言われる時。これは断っても特に支障はありません。CWは受給者の家族ではないので、入院手続きなどを代わりに行うことや、手術の同意をすることもできません。無事救急車に乗せることができれば、あとは今後の対応を考えるだけです。

 

後日、入院先のソーシャルワーカーさんから連絡が入り、数週間の入院が必要になること、今後の居宅生活をどう送るかを検討したいのでカンファレンスを実施する。その時にはCWも参加して欲しいという依頼があ流など、状況が進んでいくことになります。

 

さて、このような突発的な事案が起きると、その日の業務時間の大半が突発事案対応に取られてしまいます。そのため、通常業務に支障が出て、残業や休日出勤をする必要も出てきます。

 

勿論、一般的な仕事でも突発事案は生じます。別に福祉事務所の職員だけが特別大変なわけではありません。ただ、公務員での仕事では、ここまで人の命に関わる場面で対応を迫られることは稀です。この例でも、福祉事務所の職員が受給者宅へ直接訪問しなかったら、衰弱している受給者の発見は遅れていたと思われます。大家さんや不動産会社さんも、ここまで積極的に行動することはありません。

 

この事例を使って次の記事でも対応の続きを書いていきます。ここで言えることは、CW業務では特に、人の生き死にに関わる場面に遭遇することがあり、その時の適切な対応を求められる点が難しい業務だと思います。

 

前にも書きましたが、別に我々福祉事務所の医療の知識を持っていません。今回の例でも、例えばCWが再び一人で受給者宅へ行き、ノックしても反応がない、どこか出かけているんだなと思って帰宅。中に受給者が衰弱していることも分からず、気づけば数日後に居宅で亡くなってしまったという最悪の状況にも発展する事例です。

 

いつどういった行動をするのがベストか、適切な判断を求められてしまうところに、難しさを感じることもあります。