生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

家財処分の立会い その1

CW時代、何度か受給者入院→退院不可のため、アパート引き払いの支援を行ったことがあります。年に1~2回あるかないかなので、その時は結構神経を使うのですが、CW業務でしか経験しない醍醐味かもしれません。

 

私の例ですと、

  • その受給者とは1~2回しか会ったことはありませんでした。
  • 要介護状態ですが、居宅生活でヘルパーさんやデイサービス通所し、社会資源とのつながりはありました。
  • 家賃は大家さんへ、ヘルパーさんが代わりに手渡し。すぐ近くに住む大家さんで物件も自主管理。歴代のCWも数名、この大家さんとは会っていました。
  • 在宅酸素を利用し、近い将来は居宅生活継続不可?という印象。
  • 親族との交流は殆どなし。

この受給者が夏ごろ、居宅で倒れて救急搬送、その後一時生死を彷徨うほどの危篤状態になりますが何とか一命を取り留める。しかし、意思疎通が全くできない状態で、家に帰ることもできず、常時酸素吸入している状態になりました。

 

当初、病院の看護師から「日用品を買ってこい」「入院手続きをしろ」という指示が福祉事務所に来たのですが、基本的にこういったことはCW、行政では行いません。意外に思われるかもしれませんが、日用品の購入も本人の保護費が手元にない以上できないこと、入院手続きは基本本人、ないし家族しかできません。私の決まり文句はいつも「なぜ、受給者だからCWが対応するのか。全く身寄りのない市民の場合、どうしているのか」と突っぱねていました。これを言うと、大体その後連絡はきません。

 

(CWをお手伝いさん扱いする人たちはいまだ多くいます。非常に不快ですが、若いCWさんだと何故かやってしまう・・・やる方が越権行為だと思っています。まぁ、時折受給者から「一人じゃできない、何とかしてほしい。一緒に買い物してほしい、入院手続きしてほしい」と言われ、仕方なくやることもありますが、基本的には本人にやってもらいます。これらができないのであれば、やはり地域生活を送るための別の支援を入れる必要があります。後輩指導では、やる必要ない、それは行政の仕事ではないと助言しています。線引きが難しいのですが、代行屋ではないのです。)

 

さて、機械の力を借りて延命状態になった受給者について、家の整理が課題となります。ここは自分でも気にかけていて、さてはて容態はどうなるかと思っていたところ、今度は病院のソーシャルワーカーさんから連絡がありました。ソーシャルワーカーさんの要望では

  • 今後、慢性期病院への転院となり、在宅復帰は不可
  • 自立呼吸不可、余命は半年程度か
  • 手術の家族同意が必要。誰か親族を知らないか。
  • 出来たら家に入って、本人の衣服等を取りたい、可能か。

という要望でした。ソーシャルワーカーさんとは思えないフットワークの軽さ、これは福祉事務所としても協力しないといけないと思い、面会謝絶状態の受給者に会いに特例で病棟に入れてもらいました。

通常、危篤状態だと家族でも一部の人間しか入れないところ。ベッドに横たわる受給者と対面した際には、目をつぶって自立呼吸ができない状態。

 
さて、一つ困ったことがありました。今回の例のように、入院から在宅復帰不可、別の病院へ転院となれば居宅内にある荷物は処分できるのが生活保護の制度。

この記事でも紹介していますが、本人の同意さえ取れれば、何とか居宅内の荷物は片付けることができます。しかし今回は生きてはいるものの、意思疎通ができない状態。

 

これは事前に上司のSV(査察指導官)と相談して決めたのですが、まずCWとして容態を見て意思疎通が全くできない、直筆ができないかを確認する。不可であれば、親族を探して同意をもらう、の2つでした。

 

一応、ソーシャルワーカーさん、看護師さん立会いの下、受給者に福祉事務所CWであること、退院不可のため家の解約、財産処分をしていいかを確認しました・・・・・・・当然、反応は乏しい。問いかけが聞こえているかも分かりません。

 

その場にいる全員で、これ以上の確認は困難であることを認識し、一旦帰庁。

 

実は受給者が入院した際、改めて親族の連絡先を確認したところ、1名だけ遠縁の親族を見つけることができました。そこでその方に連絡。迷惑にならない程度に、口頭でいいので、①アパート解約に同意してもらうこと。②家の中にある家財を処分すること。の同意をいただきました。ここも非常に悩ましいところなのですが、親族代理で同意してもらう以外に方法がないため、親族にOKをもらうことはあります。

今後のとこを全て福祉事務所に一任する、家にあるものも全て処分して欲しいと言われました。

 

遠縁ではあったのですが、市で保護を受けていることは知っていたこと、実は数年前にも会っていたり、連絡を取っていた方で、危篤状態の受給者のことを案じてくれました。

 

さて、親族からも同意が取れれば転院前に居宅に入り、必要な物を取りに行くこと、アパート解約の手続きを行うことが必要になりました。

 

次は家の中に入った時の話をします。