生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

生活保護と不正受給 その13

不正受給を繰り返す輩も少なからず存在します。それでも生活保護が受けられてしまうのは何故か。この制度が批判される要因にもなっています。

 

まず、不正受給が発覚した場合はCWが受給者と話をし、その経緯と相手の反応を確認します。言い方が不適切かもしれませんが、反省の態度、その後の調査に協力的な否か、そういった面を見ています。

 

おおよそ未申告収入の金額や期間が確認できたら、ケース診断会議にかけてその受給者の処遇を検討します。この時に過去の受給者の状況などにも言及があります。

 

このケース診断会議、状況を話すのは担当CWになります。よく、福祉事務所のCWは生活保護受給者の生殺与奪権を持つなんて、冗談半分で言われます。かなりのさじ加減が生まれるのはこのケース診断会議でも同じです。

 

CWが受給者の状況をよく理解していて、なんとか今後も生活の自立を図って欲しい、と力を入れて説明をして今回は返還金の対応のみでよい、今後の再建を見守るという結果も出たりします。

 

最初はそれでもよかったのですが、翌年、またその翌年と同じように課税調査で不正受給が発覚すれば、さすがに生活保護の趣旨と反してくるわけです。生活保護制度は権利と義務の交換制度だと考えています。収入申告、家庭訪問、様々な場面で福祉事務所からの要求にこたえるから、医療費がかからない、減免制度が使える権利があります。

 

受給者の達成する義務のうち、収入申告はその基礎となるものです。自分が稼いだ、他者からお金を得たなど保護を要しない状態が少しでも発生したのであれば、やはり福祉事務所へ申告し、適切な保護費を受けるべきです。

 

何度も不正受給を繰り返すと、さすがに保護を受けるに値しないという結論も出ます。収入申告の徹底を指示する、それでもだめであれば再度指示する、それでもだめなら保護の停止・廃止を福祉事務所のケース診断会議に諮る。課長含め様々な職員の意見を総括して停廃止とすることになっても、相手側へは何故申告をしないのか、弁明させる機会を設けたりします。

 

そこでまた弁明内容を持って診断会議、そこでも改善の余地なければ保護の停廃止となるのが流れです。大体ここまでで半年ぐらいかかることもあります。最初の不正受給が発覚して、年単位でまだ生活保護を受給しながら生活することができます。

 

この状況、一般市民の方が見たら呆れ顔になると思います。自分たちの税金の支給が止まらず、不正を犯している者に対しても流され続けている、このような状況は決して許されるものではありません。

 

一般の会社ではどうでしょうか。一度のミスで簡単に解雇させられることもあり得ます。生活保護では多少のミス、過ちでは無くならず受けることができてしまいます。

 

しかし、何度も検討を重ね、やっとの思いで停廃止を掛けないといけない理由もあります。それが生活保護が「最後のセーフティネット」であり、ここが無くなると本当に人間は自分で生活をするかしかないからです。誤った対応を防ぐため、熟慮をする必要があります。

 

一応、ここで不正受給編は終了となります。