さて、相手方がずっとしらばっくれる、あまりないのですが時折手強い方もいます。
そんな時は未申告就労先に強行的に調査を実施します。そしてその他に、この者の通帳の取引履歴を確認します。福祉事務所でも、では働いている事実を忘れている、自分ではないなら企業に聞いても問題ないですよね?と確認します。そして同意書をもらいます。勿論同意書がなくても出来ますが、もらえるならもらいます。
回答は早いと10日前後で来ます。大手の派遣会社などは早いです。逆に中小企業とかだと、そもそもなぜ答えるのかわからないなどで無視されたりしてしまいます。これだと結構困ります、一向に話が進まないからです。あるCWはあまりに回答が遅いため、その企業に直接出向いて回答してもらった人もいます。
回答が揃うと、後はいつから働いていたか、金額はいくらか等を確認しつつ、ケース診断会議にかけて、今回の不正受給についての対処方法を検討します。
ケース診断会議は自治体でやり方も違いますが、一般的には会議室内で課長以下査察指導官が複数名参加し、必要資料を提出、担当者が説明をします。その受給者がどんな人か、今回の不正受給はどれくらい内容が酷いか等説明します。
説明の内容はほぼ担当CWの腕次第になります。後はそれまで受給者とどういったやりとりをしてきたか。
課税調査で該当した不正受給については、ほぼ例外なく法第78条に基づく返還請求となります。不正受給期間中、稼いだ分の給与は必要経費を除いて全て返還対象とします。
ここまで来れば流石に相手方も非を認めて、どのくらいで返還するのか、金額など気になっては来ます。大体一連の対応で2ヶ月、もっとかかることもあります。
過去に一年以上掛けてやっと解決した事案もあります。ひたすら逃げ回る、福祉事務所に来所を命じても来ない、指示書を出してもこない。指示義務違反直前でやっと来て、けどこの未申告収入を認めないというケース。一般感覚ではあり得ないと思われますが、この程度普通に起きます。
企業から提出された賃金台帳、その生年月日も名前も何もかも合っている、それでも違うという人はいます。もう、こうなってくると半分我慢比べです。どっちが先に折れるか、まぁ疑われた相手は自分が違うということを立証しないといけないので、これは負けるんですが。
しかし、何年も生活保護行政に携わっていると起きるもので、一回だけあり得ない未申告収入がありました。その受給者は関東にいるにも関わらず、就労先が鳥取県、しかもその就労期間中、当の本人は福祉事務所管内にある病院に入院していたなんてケース。入院期間中、施設入所のためのカンファレンスにも参加していたので、本人が遠く離れた場所で働くことは不可能でした。
一体誰が働いていたのか?本人が言うには、昔、友人に免許書やら通帳を貸したことがある、なんてことを言ってましたが、それかも知れないと言うケース。これは議論が分かれましたが、結局本人と決める決定的証拠がなく、返還対応となりませんでした。
さて、話が逸れましたがケース診断会議で対応が決まれば相手方に通知。返還総額をどのように返していくか、返済計画書を作成させたり、直接毎月の保護費から強制徴収したり、指示書を出して今後の再発を厳しく注意したりします。
また最近では度重なる不正受給があれば、保護停止、廃止、その他には刑事告訴をして逮捕、社会的制裁を加えることもあります。特にこの刑事告訴は自治体でも取り掛かるところは増えているため、悪質な不正受給には刑事告発を行う事例は多くなるでしょう。