生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

年金改定と生活保護費 その2

さて、年金額が変わる時に福祉事務所のケースワーカーは未だに年金改定通知書を受給者から受け取り、せっせとコピーをして金額を確認、返却しています。

 

働きかけが非常に面倒な作業なのです。受給者は、金額がほとんど変わらない年金を収入と捉えている人は多くいません。収入=働いて得た給料という感覚の人は多く、年金は自分のお金、もらって当たり前と考える人がいます。

 

しかし、毎年微妙に変わる年金額を正確に計算をしないと適切な保護費が出せません。なので、年金改定通知書をもらう、年金が入金される通帳を見せてもらう、何とか調べるという手段を取ります。

 

勿論、こんな手間を掛けずとも現行制度では、マイナンバー制度を使えば受給者のもらう年金額は確認できます。多少時間差はあっても、上のようなせっせと訪問や来所を求めたりする必要は本当はないのです。

 

さて、ここで果たしてマイナンバー制度を使って今回もらえる年金額を、福祉事務所が確認して、保護費を再計算していいのか、という疑問です。

 

これについては厚生労働省が、事務の便宜上、積極的に確認して適切な保護費を出すようなお知らせも出ています。

 

しかし、多くの福祉事務所では、これを積極的に活用する方は少ないのです。

 

何故なら、生活保護制度は「申請主義」「申告主義」という原則があるからです。福祉事務所の中では、いわゆる職権で保護変更を行うことをかなり忌避します。本人の意思がないのに、最低生活費を計算していいのか。

 

勿論、適切な保護費の計算という使命に立てば、これは認められるものです。しかし、受給者の中には、そもそも自分の年金額を勝手に調べられることを好まない人もいます。

 

生活保護を受けていながら、そんなわがままいいの?と考える方もいます。マイナンバー制度をそもそも理解していない人、その制度を使って自分の年金額を見られることを、監視されていると考える人もいます。

 

この場合、恐らくは保護決定に対する不服申立て(審査請求)ないし、訴訟提起をされる可能性が出てきます。勝手に自己の情報を取得し、勝手に最低生活の保証をさせない福祉事務所、許すまじといった形でしょうか。

 

福祉事務所にとって、正しいと思ってやることも実は受給者にとって納得し難いこともあります。その対応リスクを考えると、やはりこれまで通りのやり方で年金額を確認するのがまだまだ主流です。これであれば、本人からの申告に基づく保護変更なので、大きな問題は生じません。

 

ちなみに、毎年数名必ず、年金額の改定を絶対に教えない受給者もいます。この場合、職権で変更もできないので、ずーーーーっと認定の誤った年金額で、保護費が出されるなんてこともあります。特に年金額が上がっている年は、これをされるとずっと不正受給になります。

 

そんなの、とっとと法律違反による保護廃止でいいじゃないかと思われるかも知れませんが、この申告がないだけですぐさま保護廃止に出来るほど、生活保護法は厳しい作りになっていません。

 

なので、本当に憂鬱な作業になります。今年はスムーズに回収できますように。