生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

ケースワーカーの役割 その12

もうひとつの通院同行に、精神科への通院同行があります。精神疾患を抱えている受給者の誰もが積極的に精神科へ通院できているわけではありません。

 

薬を飲んでも変わらない、別に生活が変わらずとも生きていける、特段昼夜逆転していても困ることはない。

 

この状況は、現行の生活保護制度であればの話です。もしかしたら今後、生活保護制度がもっと改悪される可能性もあります。その時、今と同じように何もしなくても生きていけなくなる、少なからず自分で行動をしなきゃ生活保護を受けることができなくなる制度になる可能性はあります。

 

よって、通院投薬が必要な方は医療機関にかかり、体と心が動く状況に戻し、就労をしていく、少なくとも目標にすべきと考えられます。

 

さて、過去に精神科へ通院していたが現在は通院もせず、ただじっと生活をしている方をどうやって精神科へ通院させるかが問題です。前回のように、高齢の方で長年医療に掛かっていない方を通院させることも一苦労ですが、精神科への通院も同様にかなり手間暇を掛ける必要があります。

 

ケースワーカーとしては、まず受給者に対して「稼働年齢層でありながら通院もせず体調改善を行っていない場合、就労指導を行い、その指導に従わない場合は保護の停廃止となる」とある程度強い言い方をする場合があります。

確かに乱暴なやり方かもしれませんが、長年通院をしておらず毎日を無為に暮らしているのであれば、生活保護を受けるべき立場にはない状態になります。体調が悪い、外に出歩くことができない等精神面でケアが必要であれば、その状態を放置していくのではなく改善に向ける手続きが必要でしょう。

 

勿論、これは一般論であり現場のケースワークでは全ての状況に当てはまるわけではありません。ただ、前述したとおり今後生活保護法がより受給者にとって快適な制度になる可能性は少なく、より厳しい制度になっていく可能性の方が高いのです。

 

よって、何かしらの手段でまずは通院を達成させ、心身の治療に当たることが先決でしょう。

 

ではどうやって精神科へ通院させるのか。これは、地域の保健師さんの力を借りたり、福祉事務所に配属されている場合はメンタル支援員さん(いわゆるカウンセラーさんのように精神保健福祉士の資格等保有する方)と連携するのが望ましいです。専門的知識を持つ方の話の方が、理解しやすい場合もあります。

 

受給者宅へ行き、きちんと治療を受けるべき理由を話し、何とか数回の訪問の後に受給者の承諾が得られれば、いよいよ受診になります。受診するところはその症状に合わせてでもいいし、過去に受給者が通っていた精神科へ再通院でも良いと思います。私の場合は、受給者が今後自分で通えるように近くの精神科へつなげることが多かったです。

 

しかし、ここでも難しいことが起きます。それは、待ち合わせ時間に来ないというものです。これまで人との待ち合わせなど全然してこなかった、生活リズムが変わってしまっている受給者にとって、約束の日時にどこかへ行くということが難しい場合があります。過去、メンタルクリニックで待ち合わせをしても一向に来ず、自宅へ行ったところ、今寝ていたと肩透かしを受けたことは多数あります。

 

一度こういうことがあると、ケースワーカーでは「もう一緒に行きたくない!」とさじを投げてしまうこともありますが、辛抱強く「じゃあ次の予約を今から一緒に取りに行きましょう」と粘り強く交渉することも大事です。