生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

受給者の特別定額給付金の使い道

さて、昨年6月あたりに世間を賑わせた特別定額給付金(1人当たり10万円の給付金)について、勿論生活保護受給者も支給申請をしています。

 

当時、多くの受給者が「いつ出るのか」「私たちには関係あるのか」「収入認定されるのか」など様々な質問があったり、またその申請方法が分からず福祉事務所のCWが多大な時間と労力を使って支援をしたことを覚えています。

 

個人的には、生活保護受給者が最も恩恵を受けてしまったような制度だったなぁと振り返ります。何故か。この特別定額給付金は、生活保護受給者が受け取っても保護費に全く影響がなく、収入認定の対象ではなかったからです。

 

言ってしまえば、10万円丸々もらえるものでした。勿論、毎月の生活保護費は同じように支給されました。色々な市民からは批判の声等もありましたが、国が決めたことですから仕方ありません。

 

当初、収入認定(=生活保護費と調整する)ことを言われていて、何十人もの受給者一人一人から収入申告書と振り込み通帳を確認するなどのとてつもない重労働をやらされるところでしたが、最終的に収入認定なし、申告も不要と落ち着いてくれてほっとしたのを覚えています。

 

さて、受給者の方々は一体この定額給付金で何をしたでしょうか。色々な方に聞きましたが、大体下のようなものでした。

 

・これまで古くて使えなかった家電家具の買い替え。

一番多かったのは、エアコン、洗濯機、冷蔵庫でした。ご存じの通り、生活保護ではエアコンの購入費をはじめ、家具什器費の支給は特定の事情でしか支給できません。受給して数年経っている場合は、居宅生活を営んでいる限り、家具什器費の支給対象にはなりません。

唯一のエアコンの購入費も、高齢者等が購入する場合は社会福祉協議会から貸付を受けて購入する程度しか購入する道はありませんでした。

そのため、多くの受給者でエアコンを持っていない世帯では真っ先にエアコン購入をした、ちょうど夏前だったので非常にタイムリーなものでした。

洗濯機や冷蔵庫も、長年使っていて故障寸前だったのを買い替えたという人は多かったです。

 

・福祉事務所への返還金

過去発生した保護費の過払い等に関する返還金へ充てた方もいました。特に高齢世帯の方で生活であまり不自由がない、けど返還金だけずっと気になっていて少しずつ払っている受給者にとって、この10万円を使って一気に返還金を無くしたいという方もいました。これには「自分の生活に使ってほしい、本来の趣旨とは離れている」と上のような家具什器費の購入を提案しましたが、特に必要ない、返還するといってポーンと10万円払ってしまう受給者もいました。

 

・親族等への返済

過去、親族からお金を借りている人がこの定額給付金で返還したという話もありました。これも本来の趣旨とかけ離れているのですが、本人が決めたことなので仕方ありませんね。

 

・気づけば無くなっていた。生活費に使った。

若年層の精神疾患世帯ですと、これが一番多かったです。煙草に使った、ご飯代に消えた。俗にいう、あればあるだけ使ってしまう例です。

 

・子供の進学時のお金に充てたいからプールしてある。

母子世帯で進学を目指しているお子さんがいると、こういう考えをする世帯もいらっしゃいました。

 

その他、新しく電話を購入してアパート転宅できた人などもいました。定額給付金がなければ携帯を新規に購入することができず、ずっと無料定額宿泊所にいるところだった高齢の受給者などもいました。

 

一部の例を除けば、かなり特別定額給付金で生活の質向上がありました。

まだコロナウィルスの影響が収まりませんが、もしもう一度特別定額給付金の話が出れば、また受給者にとってありがたい話ではあります。