生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

生活保護と不正受給 その3

さて、受給者から収入申告がなければ迅速な保護変更がかけられず、不必要な保護費が支給されてしまう仕組みがあります。

 

では、巷で言われる不正受給の代表は何か。勿論、福祉事務所に内緒で就労をすることです。生活保護受給者であっても就労することはできます。また、就労すると収入に対して一定額の基礎控除額が認められるため、全く仕事をしない人に比べて生活に余裕が出ます。

 

私的に、生活保護を受けるギリギリの程度で就労し、医療介護費、税金等免除を受けて、必要な一時扶助を受ける。アパート更新料や通院交通費を生保にならない程度のギリギリの年金しかもらえていない人より格段に余裕があると思います。逆転現象が起きてしまうのがこの国です、不思議です。

 

話を戻しますが、普通であれば毎月稼いだ収入をきちんと福祉事務所に申告し、不足すれば保護費が追加支給されますし、多く保護費を出していればその分を返還してもらったら次の保護費で調整することになります。

因みによく、申告すれば必ず次の保護費に反映されるか、過不足なく支給されるかといえばそんなことはありません。実際、保護費の計算は月の途中で締め作業をします。その締め作業に間に合うか否か、またその給与がいつの分の給与かによって計算が変わります。そのため、次月の保護支給額がすでに決まってしまったのち給与申告をもらっても、変更が間に合わないことが非常に多くあります。この辺りが不便なところです。

 

慣れてくると受給者もなんとなく、自分の保護費はどれくらいになるか予想がつくので働きながら保護費をもらうこともそんな抵抗がなくなります。

 

就労している受給者はそのほとんどが、多少の遅れはあれどきちんと収入申告をしてくれます。生活保護受給の義務であるため、ルールを守ってくれる方は多いです。でないと生活保護行政をもう一度根本から見直さないといけない、もっと厳しい制度にしないとならないでしょう。

福祉事務所も、受給者の真面目さによって成り立っているところもあります。

 

しかし悲しいかな、この真面目さを持てない、ルーズな受給者が少なからずいるため、保護費の不正受給が発生することがあります。

 

申告をせず就労し、保護費の調整がないまま給与と潤沢な保護費で生活をする、一般国民から見たら本当に馬鹿にしているのか?!と怒られてしまう事態です。

 

何度も書いている通り、収入申告がないと原則その受給者が福祉事務所に黙って働いてしまえば、その就労収入を把握することは限りなく困難です。よく、不正受給を許すな、取り締まれという方もいますが、現行制度では不可能です。

 

これは、生活保護が申告制度であること、基本的には受給者の善意で成り立っている制度であること、福祉事務所のケースワーカーはその他大勢の受給者を対応するため、たった数名の受給者を四六時中行動を監視することができないこと等様々に理由があります。

 

言い訳にも聞こえてしまうかもしれませんが、もし本当に全ての不正受給を未然に防ぐのであれば、受給者全ての就労先を自治体で斡旋、全て管理下に置くなどをしないとなりません。

まぁ、理屈としては出来なくもないのですが、職業選択の自由がなくなるので、憲法的にNGと考えられます。

 

しかし、福祉事務所でもある時期に未申告収入に気付くことがあります。それが、課税調査の時期です。