生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

保護費を使い切った受給者の対応 その3

食糧支援も手を尽くしてしまった場合、次に考えるのが短期に日雇い就労で何とか日銭を稼ぐことです。これは結構現実的な話で、一般市民の方なら「お金がなくても働けばいいじゃないか。何故保護費に頼るのか」と考える方も多いです。

 

勿論、この手段をそれなりに模索するケースワーカーは多いです。1日は食糧支援でつなぎ、その間日雇いの就労ができるよう就労支援員などにお願いして、すぐさま就労斡旋を考えるパターンです。

今の時代、高齢者であってもそれなりに日雇い就労は可能なものが多いです。この際、えり好みをしている場合ではないと、叱咤しながら就労支援を始めることはあります。

 

しかし、これはかなり非現実的は支援でもあります。模索はします。ただ、大体模索で終わります。そもそも、短期間の日雇い就労ができる受給者であれば、既に就労済みの場合もあります。支給給与の増減は確かにありますが、定期的に給与支払いがあれば日常生活が大きく乱れるほどのお金の使い方はあまりしません。(勿論例外はあります。それはまた後程記事にします。)

 

さて、就労支援をして日銭を稼ぐこともできなくなった。その場合は収入認定を覚悟に、親族からの支援を検討します。単発の金銭的支援であれば、何とか応えてくれる受給者家族はいます。勿論、1万円とかその程度ですが、1万円あれば何とか次の保護費支給まで持たせることは多いです。

 

とにかくご飯を食べることだけに集中する。光熱費の支払いなどはこの際遅延させる。少し遅れても止まりはしない、こういう話をこっそり受給者にすることもあります。

 

それでも親族からの支援ができない場合。いよいよ福祉事務所で金銭的な支援を考えます。ここまでかなり引っ張ってきましたが、当たり前なのです。

福祉事務所は銀行でもないので、いきなり何か受給者から「保護費が足りないから何とかしてほしい」と言われても、対応する必要は全くありません。

事情は聴きますが、何度も書くように最低生活を維持するために必要な保護費は基準通り支給されます。

 

どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーしても、もうお金を出さないと生活ができない状況となったら、初めて「緊急援助金(自治体によって呼び名はまちまちです)」の支給を検討します。緊急援助金なんて書いていますが、要は次の月の保護費の前払いです。

 

前払いは基本的に制度としてないのでは?と思われるかもしれません。しかし、生活保護の開始前に早急にお金が必要となる困窮者はいます。初回保護費支給日までの数日、2週間を乗り切ることができない者に対して、予め1万円程度、先に支給して食いつないでもらうものです。

これはうちの市では「1回限り」としています。何度も緊急援助金を使うのであれば、その人の生活態度を一から見直す必要があります。なので、どのケースワーカーも援助金制度があることを安易に言いません。

 

過去、使ったことのある受給者だと「前に援助金を出してもらった。何故今回はそんなに引っ張るのか」と怒ってきますが、それだけ例外なものです。本当にどうしても足りない、どうにもならないとなった際にしか検討しません。

 

この援助金は次月の保護費に収入認定されます。なので、当然次の月の保護費は減ります。その分、次の月は苦しくなるので、やはり緊急的なもの、あまり取るべき制度ではないことになります。