最近課税調査の経過報告を受けたりしているため、世の中の関心事で特に生保受給者に対してネガティブな印象を持ちやすい「不正受給」について。
不正受給とはその字の如く、本来受けるべきでない生活保護を何かしらの理由で受けていたこと、もう少し言うと、その生活保護費が本来必要なかったのに、福祉事務所に対して何らかの申告をせず、そのまま不要な保護費を受け取っている状態でしょうか。
不正受給は毎年のように新聞報道等で流れ、最近では逮捕者も出ているところです。勿論、国民の税金である生活保護費を必要以上に受け取ることはご法度であり、取り締まられるべきものです。
【どうして不正受給が起きるのか】
多くの方は、何故不正受給が起きるのかと疑問に思います。これは、生活保護費の決定に仕組みがあります。生活保護というのは、受給者の資力(自分で稼いだり、または年金や手当)が最低生活に足りない場合、その不足分を支給する制度です。
例えば、おじいちゃんおばあちゃんで年金をもらっていたが、その年金では足りないので生活保護を受ける、というものです。
毎年もらっている年金なので、それほど大きなブレが生じず、必要以上に保護費を多く渡すことはあまりありません。
年金は毎年数百円~程度増額されたり、減額されたりします。本年度6月から支給されている年金はほんの少し増額されています。
例えば、去年より年金が少し増額されれば、支給されている保護費は少し減額になります。生活保護の基準が昨年度と変わらず、支給される保護費が変わらなければ、当然プラスマイナスゼロになるよう計算されるためです。年金はその全額が収入認定の対象、砕いて言えば、支給額全額を見てなお最低生活費に足りないかを見るものだからです。
では、この年金額の増額があった場合、どうやって福祉事務所は把握するのでしょうか。
これは、原則「本人からの自己申告」になります。ある時期になると、福祉事務所に年金支払通知書を持って「年金少し上がりましたよ~」と申告する必要があります。
この令和の時代に、たった数百円上がった年金のために、福祉事務所の職員はわざわざ受給者から年金支払通知書をもらい、時には家じゅうを探し、更に時には再発行手続きをしたりして、その把握に努めます。
非常に重労働かつレトロなやり方をしています。実際には令和元年度からマイナンバーによる情報照会が可能になっていますが、それでもシステムが整っていない福祉事務所では、依然として受給者からの申告を待って、変更を掛けます。
さて、この申告がない場合どうなるか。
保護の変更決定が掛けられません。そのため、前月同様の保護費が支給されます。つまり、申告がない限り、福祉事務所では勝手に保護費の再計算を行って変更することをしないのが実情です。
できないわけではありません、敢えてしないのです。
これは、「申請主義」を取る生活保護制度の非常に愚かな面だと思っています。勝手に変えてしまえばどれほど楽か、CW時代に何度も考えましたが、原則は自己申告です。
そのため、申告があるまでひたすら働きかけ、何か月もしてやっと出してもらうことなぞ沢山ありました。
特に生活保護受給者の場合、少し保護費が減るだけで物凄い剣幕で電話や来所をし、「俺の保護費が減っている!!」と怒鳴り散らす方がいる一方、年金が少し増えたのに保護費が変わらないことに全く疑問を持たない方は多いです。
もらえたらラッキー、減ると横暴だ、虐待だと言ってくる方もいるので、非常に神経をすり減らすのが保護変更です。
この「自己申告」が理由で、不正受給も起きてしまうのです。
言われなきゃ分からない、言われないものは勝手に変えられないという点です。