生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

受給者との距離感

色々な仕事をしている中で、これほどまでに市民の方と距離が近い業務も珍しいと思います。家庭訪問や所内面談など、担当受給者と膝を突き合わせて話をすることが多い仕事ですが、それよりも難しいなぁと思うのが、その「距離感」だと思います。

 

例えば、受給者からのありとあらゆる事柄に対する質問に答え、具体的な解決策を求められ、更に行動を求められることです。

課税課に所属すれば、課税に関することをやればいいのです。戸籍課なら戸籍に関すること、なのでその仕事の幅は分かりやすいのです。

 

ケースワーカーの場合はその幅が無限に広がります。例えば受給者から、「住民票の異動手続きをどこでどうすればいいのか」という質問に対して。戸籍課の人なら、窓口に来てください、ネットで調べてください、周りに聞いてくださいで終わります。これで終わっても、特に一般市民は「ちょっと冷たい人だなぁ」程度で終わります。

 

しかしケースワーカーの場合、同じ答えをすると大体「何でそんな冷たいのか」「何故知らないのか、調べてほしい」「代わりにやってほしい」などと踏み込まれます。日頃から色々な支援対応をしている故でしょうが、これが結構ケースワーカーにとって負担感があります。

 

受給者は1人のケースワーカーに頼んでいるのですが、こちらは大体80~100人程度の担当を抱えています。あり得ませんが、例えばこの担当受給者が全て同じ事を要求してくれば、確実に対応しきれません。

 

しかし、その対応しきれない理由は、当の受給者には関係の薄いことです。何故なら、自分は困ってできないから。対応してもらえないという事実だけが残ります。

 

これが難しい。対人援助の中で、禍根が残るのがケースワーカーの仕事です。

 

勿論、全部が全部対応しなきゃいけないことではありません。住民票の異動一つだって、代わりにやらないことも選択肢の一つではあります。ただ、これをどこまでやるのかという範囲が明示されないので、結構カッチリ仕事をやりたがる職員は、悩んでしまったりします。しかも、周りに相談すれば「私ならやる」「絶対やらない」「ケースバイケース」など、答えがバラバラだったりすので、余計悩みます。

 

私が現役の時は、その受給者の性質で結構変わったりします。これまで、こちらの要求(というと大げさかもしれませんが、大きな問題を起こしてこなかったり、こちらが代わりにやる際にもきちんとした手続き(委任状をしっかり書いてくれる)をしてくれるなど)にしっかり応えてくれる受給者であれば、本当に困ったときは支援をします。

 

特に高齢者の場合は転居作業一つにしても、かなり肉体的な負担がかかります。そういう時は何かのついでに住民票の異動、転居届を郵便局に出す等の作業を代行することはありました。

 

なので、どこまでやるべきかの物差しを自分で持っておくと、これからの対人援助がしやすくなるかもしれません。答えはありません。できる限りやっていけばいいと思います。