生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

ケースワーカーの役割 その6

CW業務で対応苦慮する場面では、やはり病院などのシーンでしょうか。

 

前回の例の続きで説明していきます。

 

衰弱した受給者がなんとか救急搬送されました。しかし、ここで問題が生じます。そして、多くの新人CWが対応に苦慮するシーンです。

 

病院から福祉事務所に連絡が入った際、向こうのソーシャルワーカーさんから、患者(受給者)が依然として意識が戻らず入院手続きでできていない、代行してほしいと話をしてきます。さて、赤の他人の福祉事務所のCWが受給者の代わりに入院手続きができるでしょうか?

 

答えは、しなくていい、になります。まず、他人である福祉事務所の職員が入院手続きを代行する必要はありません。病院は、とにかく誰かしらの手続きで入院手続きを行いたいだけです。特にそれが公務員だろうが、親族だろうが、受給者本人と関係があれば誰でも良いのです。

 

福祉事務所でのCWに対する指導としては、まず福祉事務所では本人に代わって入院手続きは行わない。行うのであれば本人の回復を待って本人了承の元行ってほしい。また、一般市民で身寄りのない人はどうしているのか?と聞きます。これで大体の病院は、これ以上福祉事務所に代行を求めることはしません。

 

大事なことは、受給者の人生を肩代わりしてはいけないということ。もし、受給者が、俺は入院の同意なんてしてない、何故勝手にやったのか!?となれば、我々は単に越権行為をしてしまったことになります。善意でなんでもやろうとしてはいけません。

 

そして、善意の裏返しで、この代行です大きな金銭的負担がかかることがあります。入院手続きの中には、リネン代の支払いなど金銭的負担を求める部分があります。仮に福祉事務所のCWが入院手続きで、保証人欄に自分の名前で同意した場合どうなるか。勿論、受給者が支払いを怠ったりすれば、入院手続きを代行したCW個人に支払いを求められます。

 

なんで業務の中で行った行為なのに、受給者が本来支払うべき債務の支払いを公務員が求められるのか?

 

答えは簡単です。金銭的負担の保証人として自分がなってしまったからです。これを気づかず入院手続きや、その支払いの同意をしてしまう新任CWがとても多く、毎年かなり注意して指導しているところです。

 

こんな詐欺まがいなことが横行していいのか?と怒る人もいますが、これは違います。別に詐欺ではないのです。病院は適切な手続きで誰かに金銭的負担の保険をかけたい、そこにCWが名乗り出た、これだけの構図なのです。

 

その他、対応に苦慮する他の場面では、買い物の代行です。同じく入院手続きの中で説明していきますが、時折病院から、まだ受給者の意識が戻らないが入院のための日用品が足りない、代わりに買ってきてほしいと言われることがあります。

 

非常に悩ましいのですが、私はよほどなことがない限りお断りしていました。これも、福祉事務所の職員の業務の中に、入院中の受給者の日用品の購入が含まれていないからです。

 

そんな紋切り型の冷たい対応しないで、と言われる方もいます。しかし、その日用品の支払いは誰がするのでしょうか?基本、生活保護費は本人の口座に入金されること、福祉事務所の独断でその保護費から徴収することができないこと、本人がそのまま亡くなってしまえば、保護費の支給はなくなってしまうことがあります。

 

福祉事務所が受給者のために何かする、そのためのお金はありません。それは全て生活保護費の中でやりくりされるためです。

 

仮に善意でCWがポケットマネーで立替えた場合、この立て替えた回収するには、受給者本人からもらうしかないのです。しかもこれは、決して適切な行為とは言えません。受給者とCWとの間での金品の収受は極力発生させないことが後々のトラブル回避につながります。

 

もし、意識を取り戻した受給者が、そんなこと別に頼んでいないから払いたくないと言われたら、折角の善意は全くの無駄になります。

 

また、公務員の業務の中で自分のポケットマネーから支払った費用を、組織に請求する場面はほとんどありません。立替払いが通じるのは、例えば出張などで行った交通費ぐらいです。

 

昔からCWをやっている大先輩方は、昔は当たり前のようにこの手の対応をやっていて、受給者から立替払えた分を徴収するなど行っていたそうです。しかし、受給者とCWが金銭のやり取りを行うことは今の時代にそぐわないという反省から、よほどのことがない限り行いません。色々なトラブルになるため、受給者から相談されたら受給者と一緒に買い物へ行き、受給者の財布から受給者自ら支払うよう、部下のCWに指導していきます。