生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

ケースワーカー質問コーナー

職場の後輩からこんな質問がありました。

 

Q.高齢者で在宅生活限界なのに、一向に施設入所に応じない。地域資源はかなりギリギリまで使っていて、大家からはこのままでは貸し続けられない、福祉で退去させてほしいと、事故物件になったら遺留品(残地物)が残ってしまうことにかなり不安を持っている。

 

保証人は当然いなくて、死後どうにもならない状態。亡くなる前に退去させてくれないと困る。次の契約更新は当然しない。

 

なるほど良くあるパターンです。契約更新しない、というのは本当なら裁判になるとなかなか大家さんとして立場が弱いのですが、取り壊しするとか言われてしまうとそこでおしまいです。

 

ちょっと昔の人だと、ついつい福祉でなんとかしろという話を持ち出してくるあるあるな事例です。

 

さて、この回答としては

 

A.施設入所への強制はできない。本人が納得しない状態で施設入所を進めても、どこかで拒否して話が頓挫する可能性が極めて高い。

 

というものです。

 

貸してる大家さんや介護サービス提供事業者からしたら、何を無責任なと言われてしまいますが。これが現時点での回答です。

 

何故なら、人がどこで生活するかはその人にしか選べません。当たり前ですが、家にずっといたければあるしかないのです。

 

昔ですと、養護老人ホームや特養に勝手に申し込んで有無を言わさず入所させるケースワーカーもいたみたいですが、今それをやると全くいいことがありません。

 

本人の意思というのが非常に重要になっています。仮に認知症だとしても、これは本人が下した決断であれば、誰も否定できません。

 

(時折、認知症=全く理解ができない状態、と考える人がいますが、それは誤りです。おそらくある程度在宅生活できている人なら、施設に入る・入らない程度の理解はできます。)

 

なので、ケースワーカーとしては苦しい時期なのですが、周辺の協力者にひたすら協力をお願いするしかありません。

 

ただ、本人にも約束をさせる必要があります。自分のわがままでどれだけの人間が時間を割いているか、どれだけ動いているか。

 

何より、次急変したら入院したら、もうその時は施設入所を本腰入れて考えてほしい、ということです。

 

人や物、時間は有限です。誰かがそれを提供してくれているということを、しっかり本人が理解することが大事です。それは現実をきちんと伝えてあげることになります。

 

それを持って、それでも家で生きていくなら、しっかり服薬、栄養を摂って、周りに甘えつつ礼儀を弁えていくこと、これを伝えていく必要があります。

 

オカン的な姿勢かもしれませんが、ケースワーカーは他者に謝って多少の調整しかできないレベルまで来ています。

 

仮に施設入所になったとき、迅速に入所手続きが進むような施設選び、入所同行への支援など、次の支援策をきちんと用意しておくことも大事です。

 

いきなりどーーーんと事態が動くことになるので、動いた時に「待ってました!!喜んで!!」という感覚で動けるようにしておきましょう。