生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

コロナウィルスの影響による保護申請 4

 コロナウィルスの影響で経済的困窮に陥っている方が多くいらっしゃり、生活保護の相談・申請が増えています。

 さて、大家さん・不動産会社さんに今後「生活保護を受けている。家を探している。」という方が今後増えてくるかもしれません。

 

 社員寮付きの仕事を解雇されてしまうと・・・。

  

会社を解雇されてしまい、住んでいた社員寮を退寮させられてしまうと、仕事も居所も失ってしまいます。一気に路頭に迷うことになり、どこへ行っていいか分からなくなります。

 この時、実家に帰るや信頼できる友人宅に身を寄せる、暫く厄介になりながらまた仕事を探してすぐに再就職する。住むところも何とか見つけられればいいのですが、世の中そう上手く行く方ばかりではありません。

両親は高齢で頼れない、既に亡くなっている、親族も疎遠な方。友人知人だって最近不景気だって聞いている、とても自分が頼ることができない。

 

 こういった方は少なくありません。

  さて、こうなると人はどこへ流れていくのでしょうか。

 お金があればビジネスホテルに泊まる、カプセルホテルに入るなどの手もあります。

 また、敷金礼金の不要なアパートを契約して入るなどもできるかもしれません。

 

 しかし、お金が少なければこういった手も使えません。

 こうなると、一晩中貸してくれるネットカフェに流れていく人も少なくありません。

 今まではこれでよかったかもしれませんが、昨今のコロナウィルスの影響でネットカフェも軒並み閉まっています。

 

 今は行政の政策で生活困窮者自立支援法に基づく支援対象者を含む、一時的なホテル滞在ができればホテル暮らしで凌ぎますが、それも期限があるものでしょう。

 

mainichi.jp

 この期間に仕事を探してアパートを探して~という流れになりますが・・・。

 もし見つからず、お金も底をついてしまうともしかしたら生活保護の申請となるやもしれません。

 ※実際に厚生労働省では各都道府県等に対して、今回のネットカフェ難民で一時生活支援事業の対象となった者については、緊急一時宿泊所利用時に、その後の生活再建のために生活保護窓口を紹介しているようです。生活困窮者自立支援法は複雑な法制度のため、割愛します。

 

 保護申請はどこで行うのか?

 

 よく、ネットカフェに住んでいる人は保護を申請できないと思われていますが、「申請はできる」ということになります。

 また、ネットカフェがあるところで申請を行う必要はありません。

 そして、自分の本籍や住民票がある自治体で行う必要もありません。全国どこでも構わないのです。

 時折福祉事務所では「なんで貴方、この自治体に来たのですか?縁あるところに行ってください」と言ってしまう相談員もいるようで・・・。

 

 そこで今の事情を話して、あとは保護を申請するだけです。

 あとはコロナウィルスの影響による生活保護申請 2 - 生保アパート経営塾の通り、要保護状態であれば保護決定がなされると思われます。

 

 保護申請~決定後はどこへ住むのか。

 

 さて、保護申請後にはまず居所(居場所)を定める必要があります。

 生活保護法では、居所を定めている人にしか保護の適用がありません。保護決定後に路上で生活をするなどはできません。

 

 (時折、保護決定後、友人宅へ居候したいなど言う方もいらっしゃいますが、これは認めていません。もし居候したいのであれば、その友人から支援を受けて生活してください、その友人も含めて保護の要否判定を実施する等対応になってしまいます。)

 

 生活保護は、自分が実際にいる場所でのみ、その自治体から保護を受けられます。

 例えば、墨田区内の〇〇町に住んでいれば、その町を管轄する福祉事務所で保護を受けます。

 では、今回のような寮を追い出されてしまって住む場所がない方が福祉事務所に来た場合、どうなってしまうのでしょうか。

 

 無料定額宿泊所・簡易宿泊所へ行く場合。

 

 これは各福祉事務所で取り扱いが異なりますが、おそらくは「無料定額宿泊所」を紹介される可能性があります。

  「無料定額宿泊所」とは、社会福祉法(昭和26年法律第45号。以下「法」という。)第2条第3項に定める第2種社会福祉事業のうち、その第8号にある「生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる事業」に基づき、設置される施設です。無料低額宿泊所(宿泊所)とは 東京都福祉保健局

 

   文面にすると非常に伝わりにくいのですが、要するに社会福祉法という法律に則って設置されている施設ということです。

 施設と聞くと、非常にありがたみを感じるかもしれません。生計困難者のために低廉に住む場所を与える、そんな印象があります。

 しかし、無料定額宿泊所はその場所、形態で非常に差が大きい場所と考えています。このブログではその実態について具体的な言及は控えますが、元CWとしてもあまり利用を勧めたくない場所ではありました。

 相部屋で一人当たりのスペースが確保されていなかったり、プライバシーが全くなかったり、入浴設備がなかったり等様々です。

 ※勿論、献身的な法人が運営する無料定額宿泊所で、とても素晴らしいところもありました。私もその法人が運営する無料定額宿泊所には、積極的にお願いをしていましたが、あまりに出来がいい施設であったため常に満員という状況でした。

 

 もう一つ、簡易宿泊所に行くよう指導される場合もあります。

 簡易宿泊所は旅館業法で定められているもので、いわゆる「素泊まり旅館」です。大体、1日2,000円弱で宿泊できる場所です。

 東京都内であれば山谷地区、横浜の寿町、川崎市の日進町などが有名です。

 

 簡易宿泊所「ドヤ(宿を反対に読んだ呼称)」とも呼ばれ、昔は日雇い労働者の泊まる場所として栄えていましたが、最近では外国人旅行者が、低廉な宿泊施設を求めるため、簡易宿泊所に長期滞在している例もあります。(外国の旅行ガイドブックでは、宿泊先として掲載もありました。不思議な世の中です。)また、地方からの就活生が都内に滞在するときなどにも使う人がいるようです。

 一応、個室であったり空調代を払ってエアコンが使えたりするところもありますが、3~4畳程度で何もない部屋です。最近は外国人旅行者のためにwi-fiも飛んでいる宿泊所があったりと、整備が進んでいるところもあったりします。

 時折、私も簡易宿泊所にいる受給者を担当したことがありましたが、ふらっと出掛けたままいなくなってしまう方もいて、失踪廃止をすることもありました。

 

 この無料定額宿泊所、簡易宿泊所どちらかに居所を構え、一旦生活を落ち着かせる。ある程度自立に向けた調整ができるようになれば、福祉事務所としてもアパートへの転居を認めていくのが一般的です。

 この辺りは各福祉事務所での扱いが異なりますが、あまり長期間これらの宿泊所に滞在させないように転居指導をすることが多いです。

 (実際には宿泊所が気に入ってしまって動きたくない人、携帯が作れずアパートが借りれない人等様々で、転居指導がうまくいかない方も少なからずいます。)

 

 転居の時には今後、ブログでも更新していきますが初月家賃や敷金、家具什器費、布団代などが支給できますので、あまりお金を持っていなくてもアパート転宅ができます。

 大家さんたちの関係では、無料定額宿泊所、簡易宿泊所に身を寄せていた受給者が、福祉事務所から転居の許可を得てアパート申し込みをする方が増えてくるかもしれません。

 ある意味、アパート空室を埋めるチャンスにもなるかもしれませんので、今後の動向には注意する必要があります。