生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

コロナウィルスの影響による生活保護申請 3

 コロナウィルスの影響により、経済的困窮に陥っている方が多くいらっしゃいます。

 その中で、生活保護相談・申請件数が増加しています。

 大家さん、不動産会社さんにとっては今後、どういった動きが出ていくのか考えていきます。

 

 アパート入居者が生活保護を受けるようになるとどうなるか

 

 アパート入居者が生活保護を受給するようになると、以下のような動きになるのが一般的です。

 

  1. 家賃額が住宅扶助上限額内であれば、転居指導にならず住み続けられる。
  2. 家賃額が住宅扶助上限額を超えてしまっているのであれば、転居指導となる。

 ここで、今後何度も参照する住宅扶助上限額が分かる表を作成しました。こちらは東京都23区内の級地表です。

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※令和2年4月時点の基準表を元に算定。具体的な額は各福祉事務所へお問い合わせください。

 

 1.であれば、住まいについては大きな変化はありません。

 例えば、今入居しているアパートの㎡数が18㎡、50,000円の家賃であれば、福祉事務所としてはこの受給者に対して住宅扶助を50,000円で認定することになります。

 入居者には生活扶助や住宅扶助が支給され、この住宅扶助を大家さん等へ引き続き支払っていけば退去にもなりません。入居者にとっても、生活保護費から家賃が毎月支給されるので、今後も家賃滞納の心配なく居住することができます。

 

 2.の場合、入居者にとっても大家さん等にとっても大きな変化が生じます。

 例えば、18㎡のアパートに70,000円で住んでいる場合。

 これは住宅扶助上限額を超えてしまっているため、福祉事務所としても受給者に対して転居指導を行っていきます。住宅扶助を超えるアパートに住み続けることは、経済的にも負担が大きいこと、生活保護法では超過する家賃額を生活扶助で支払うことは想定されていません。

 (一部例外については、住宅扶助額は書面上の金額!うまく使う管理費・共益費 - 生保アパート経営塾をご覧ください。)

 

 受給開始後に出てくる相談事

 

 アパート入居者が生活保護を開始すると、もしかしたら大家さんところへ家賃の減額ないし、管理費・共益費への家賃額振り分けを相談されるかもしれません。

 家賃の減額交渉は確かに、入居者にとっても大家さんにとってもあまり心地のいいものではありません。

 入居者にとっても、これまで入居させてもらっていた恩もあり、言い出しづらい気持ちがあります。

 大家さんにとっても、純粋に家賃収入減となってしまいます。ご自身の生活もありますので、すぐに承諾は難しいかもしれません。

 

 もし、管理費・共益費への振り替えを入居者から相談されたとき、これはできたら承諾いただけると、入居者が早急の転居を行わなくて済む可能性があります。

 勿論、これまでに家賃滞納があればその支払いはどうするのか?という話も出てきますが、とりあえず福祉事務所の転居指導はなくなります。

 

  利用したい住宅扶助代理納付

 

 もし入居者にほかの稼ぎがなく、住宅代理納付制度(福祉事務所が入居者に代わって直接大家さん等に家賃を振込む制度)が利用できれば、今後の家賃滞納を防ぐ意味からも、導入を検討しても良いと思います。

 住宅代理納付制度にはメリット・デメリットはありますが、家賃滞納が防げるため大家さんにとっても収入確保という面ではメリットは大きいです。

 

 上記のような家賃減額、管理費等への振り替え相談があった場合、大家さんとしては「もしかして生活保護を受けるようになったのかな?」と考えられるかもしれません。

 勿論、生活保護受給者は第三者に自身が保護を受けていることを申告する義務はなく、また福祉事務所も問い合わせに答えることはできません。

 ただ、入居者自ら「実は生活保護を受けるようになったので・・・」と話があれば、住宅代理納付制度を使うきっかけにはなります。

 大家さんから勧める生活保護の利用 - 生保アパート経営塾のように、入居者の生活状況が変わった印象があり、その後相談があった際には、何か環境が変わったのか?もしかしたら生活保護受けたのかな?と少し気にしてみるといいかなと思います。