生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

入居者の特徴~高齢者編(死亡リスク②病死)

高齢者で死亡リスクの高いもう一つの要因が病死です。

体調を崩して救急搬送された、入院が長期化してしまいそのまま亡くなってしまった。この場合、大家さんや不動産会社さんは周囲から、入居者が病死したことを聞く可能性があります。
この場合、 での対策として検討した火災保険の適用ができない可能性があります。
過去、CWをしている際、受給者が病院で亡くなったことを伝えたところ、以下の訴えがありました。

- この入居者の親族の連絡先を教えてほしい。

  • 残置物の処分と運搬費、原状回復費用を請求する。
  • 加入していた火災保険は居宅で亡くなっていないので、適用されない。

というものでした。

生活保護はあくまで受給者が生きているときの適用されるもにです。
亡くなってしまうと、家賃も出ません。
当然、その他未払いの費用も福祉事務所で支払う事は出来ません。
大家さん等が全て費用負担することになります。

私も当時か、経験不足だってせいもありますが、火災保険が居宅内で亡くならないと適用されないことをこの時初めて知りました。

では、入院中に亡くなってしまった場合のリスク軽減はどんなことが考えられるでしょうか。

生活保護費では、一時扶助に「家財処分料」の制度があります。
これは、受給者が入院等により現在のアパートに戻れない状態=帰来先がない となると、本人の同意が得られれば居宅内の物品等を処分するための費用を扶助することができます。


生活保護法では、入院期間が6ヶ月を超過(一部、その後の退院の目処があれば+3ヶ月)すると、住宅扶助を削除してアパート退去をする必要が生じます。

退去時に居室内にあった自分の荷物等を処分するために、敷金返還金その他の援助では処分経費が賄いきれない場合、家財処分料の扶助ができます。これは、ほかに施設入所をする際にも、家財の一部を事前に処分する際にも認められます。

なお、長期入院が決定的となり在宅復帰が困難となった場合は、6ヶ月を待たずとも、本人の同意で処分手続きができます。
本来であれば一旦外出し、いるものいらないものを選別できればいいのですが、外出すら困難の状況であれば、居室内にある貴重品以外は全て処分となります。


この手段を取れる場合、大家さん不動産会社さんが入居者の異変を知ったら、すぐに福祉事務所に相談することをお勧めします。CWからの連絡を待っていると、いつまでも連絡がないまま亡くなってしまう可能性も高くなります。

福祉事務所で入居者がもう戻って来れないと判断できた場合、家財処分業者を頼んで処分する流れが一般的だと思います。
私のCW時代には、日頃からお願いしている処分会社さんに依頼をしていました。簡単な居室のクリーニングまでしてもらえたこともありました。

この家財処分ができるか否かで、大家さんの費用負担もかなり変わってきます。

入居者の容態によってはすでに意思疎通が難しい状態にあるや、入院から死亡までに期間が短い場合もあります。

やや構えすぎかもしれませんが、あらかじめ入居時に「長期入院となってその後在宅復帰とならない場合、居室内にある家財等は貴重品を除いて全て処分することに同意する」などの同意書をもらっておくなどの対応策も考えられます。

この事例は実際にありました。大家さんもこのような対策を講ずる代わりに、高齢者の入居を認めていました。

なお、どうしても本人と意思疎通が出来ない場合、親族を探して連絡、処分の同意を得ていることも多いです。
このため、やはり事前にきちんと親族関係を把握しておく必要があります。

そのほか、「家財保管料」という制度も同じ一時扶助で定めがあります。
入院が長期化してしまいアパート退去となってしまった場合、今後の転院や回復後の施設入所に荷物を持っていけるよう家財をトランクルーム等に預けることができます。

家財保管料は13,000円/月まで支給できますが、こちらも私は保管会社さんにお願いをして、直接会社さんに支払っていました。
家財保管料は最大で1年間支給できます。その間に新たな行き先を探す必要があります。

なお、家財処分時にも家財保管開始時にも、できたら大家さんないし不動産会社さんの立会いをお願いしています。その場で家財撤去、アパート解約手続きを行うことでじかんら短縮にもなるからです。

いずれにせよ、居宅内での死亡と異なり、少なからず使える制度があります。入院した受給者の場合はスピーディーな対応が求められます。