生活保護ケースワーカー奮闘記

令和時代に福祉事務所のケースワーカーとして働く公務員の皆さん、またその関係組織の方々に関する情報を提供します。

CW業務の難しさ

uhb.jp

アパート経営とは関係があまりありませんが、記事になっていたので所感を書いてみようと思います。

 

この記事は恐らくですが、生活保護の申請後の家庭訪問の場面だと思います。生活保護の申請をすると、その申請者がどこに住んでいるか、どういう場所か、間取、家具什器(=生活必需品)は揃っているか、また初回の家庭訪問では申請者のこれまでの人生を振り返ってもらう生活歴の聞き取りを行います。

 

生活歴の聞き取りの中で、自分の生まれ、学歴、職歴、婚姻歴、資産、借財等かなり細かく個人情報を確認します。これは、今現在の困窮状態がどうして発生してしまったか、現在最も対応しなければならない障害はなにか、中長期的な自立に向けた支援をどうしていくかを検討するために必要です。

 

「なぜそんなことまで細かく聞かれなきゃいけないんだ!」という人もいます。・・・いや、実際は殆どいません、年に10~20件ぐらい新規申請を受けた時に1人、いるか、いや、いないかなぁ程度です。皆さん誰しも、福祉事務所に生活保護の申請をするまでどういう人生を歩んできたか、話をしてくれます。勿論、話したくないことは無理に聞きません。ただ、その後の支援が難しくなるのでなるべく聞きたいのがCWとしての心情でした。

 

時折、「話さないと保護開始になりませんか?」と聞かれますが、そんなことはありません。ただ、すっかすかの情報だと流石に困ってしまうことも。皆さん、特に答えにくいのは家族との関係でしょうか。ここまで、家族との折り合いが悪い、過去から暴力を受けてきたなどの方もいますので、その点は心情を汲み取るだけで終えることはあります。勿論、本人が嫌がれば扶養調査もしません(扶養調査はあくまで優先されるだけであり、しないと保護開始にならないというわけではありません。)

 

生活歴の聞き取り、今後どう生きていきたいかを事務所でまとめ、また保護の要否を検討して開始決定、新規開始となります。新規開始になると、様々な支援が始まりますが、大体CWとしてすぐに行うのが

  • 高額家賃に該当していれば、転居指導
  • 借財があれば、自己破産や任意整理のための法律相談
  • 年金調査(使える資力を使い切っていない場合)
  • 扶養調査(本人同意のある者に限る)、財産調査(法第29条に基づく調査)
  • 各種免除申請
  • 通院指導

でしょうか。開始初期にこれらをやらないと、超多忙なCW業務はあっという間に時間が無くなるので、無理してでもやります。

 

さて、この記事では3人の職員が家庭訪問をしていますが、実際は1人でいきます。それが女性であっても、1人が原則です。大よそ行政の仕事で単独で市民の家に行くのは、保健師さん、助産師さん、我々CW程度です。CW業務の中で、他の支援員さんと一緒に行くことはありましたが、CWが2名、3名でいくことはありません、複数名でいく場合は、よほどの困難対応の時に限ります。

私もCW時代、査察指導官(上司)と一緒に行ったことは1、2度ぐらいです。単独での行動が多いため、やはり日々、万が一の危険に備えていることは確かです。

 

よく言われるのが、必ず入り口の近くにいること(入口に背を向けておくこと)、必ず行き先を職場に伝えておくこと、数時間経って帰ってこなければ携帯に職場から連絡をもらうことあたりです。防犯ブザーなどの携帯はありませんでした。

これは女性職員でも同じです。そのため、極々稀ですが、痴漢行為を働こうとする輩に出くわす場合もあります。非常に残念ですが、そういった受給者に対してはその後、査察指導官が対応するなど注意を要することがあります。

また、本当に稀(稀、稀と強調してしまうのは、本当にごく一部の受給者の例であることを誤解なくお伝えしたいためです)に、CWに上記記事のような暴行行為を働く者もいます。勿論、被害届を出す、逮捕起訴などを受ける場合もあります。

 
起訴されると、保護廃止となります。そうなると、またアパート大家さん、不動産会社さんは困ることになりますが・・・いやはや。
 
私もこれまで数々の暴言を受けてきました。中にはその暴言等でメンタルをやられてしまう職員もいるため、あまりに酷い場合は上司対応、暴言は侮辱罪は脅迫に該当するので止めるよう指導することはあります。
 

この記事の相談者がどういった経緯で暴力を振るったかは定かではありませんが、全く相談者自身に徳になることはありません。勿論、我々の聞き方、態度にも落ち度がないよう日々気を付けているところではあります。対人援助は本当に難しいので、日々勉強していく必要があります。